第10回日本小児在宅医療支援研究会

小児在宅医療における在宅診療所と病院との連携

9月5日に開催された第10回日本小児在宅医療支援研究会で、「小児在宅医療における在宅療養支援診療所と病院との情報共有の課題について」とのタイトルで発表しました。以下その要旨です。新生児低酸素性虚血性脳症で有効な自発呼吸や咳嗽反射はみられず気管切開、人工呼吸管理されている幼児に対して地域中核病院より在宅医療の依頼があり訪問診療を開始しました。訪問診療開始後、加湿不良による呼吸状態悪化で緊急入院となりました。加温加湿器が変更されそのモードも調整されて退院しましたが退院後も喀痰が吸引されず、加温加湿器の調整が困難なため病院担当医と相談し排痰補助装置を導入することとなりました。これを機会に、当院と訪問看護ステーションとで利用していた医療用SNSに病院担当医も参加してもらい、排痰補助装置導入目的入院の日程調整、経管栄養量や水分量の調節、排痰補助装置の圧設定変更やその経過報告、病院で交換したカニューレの様子や皮膚障害、在宅リハビリテーションの画像などを情報共有しました。ところがその後、病院内で個人情報保護の観点から待ったがかかり病院側主治医の参加は中止となりました。

情報共有の課題とは

 

小児在宅医療は病院での治療が継続していることが多く、病院と在宅でそれぞれ担当医が存在することになります。在宅医も状況によって人工呼吸器、加温加湿器の調整、水分量や筋緊張の評価や服薬調整などを行う必要があります。その際在宅医は地域連携室を通じて連絡や相談しますが、タイムラグがある点や必ずしもスムースに行えるわけではないことが問題です。この点を解決するツールとして、SNSの活用が有用であると考えられます。SNS自体は厚生労働省もガイドラインを作っており、セキュリティ対策など基準を満たせば多職種の連携に大変有用に活用することができます。病院担当医も経過の把握ができ外来・入院診療が円滑に進む利点がありますが、本来病院外での診療に対する個人的助言であり、医師個人に負担のかからない病院内体制作りが重要と考えられます。具体的には、病院全体として地域で多職種と連携するコンセンサス作り、病院として参加可能なSNSの公式な選定、ガイドラインに則った個人情報保護システムの構築、参加する病院主治医に対する承認、支援や勤務評価、診療行為における責任所在の明確化、病院内における多職種の積極的な参加、などが挙げられます。