新型コロナウイルス感染後のだるさ・疲労
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が治った後でも、だるさ・疲労が持続するケースが多くみられています。感染症後にだるさ・疲労が持続する病態として筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)が知られていますが、これらは同じものなのでしょうか?Sonia Poenaruらがレビューにまとめていますので以下に紹介します。
COVID-19感染症では呼吸器、神経、消化管、血管などに様々な症状がみられます。通常2~3週間以上続くことはありませんが、中には回復期が数ヶ月にわたって続くことがあります。この状態はME/CFSという、他の感染症に伴う多領域にまたがる病態によく似ています。一般に”Long COVID”と呼ばれていますが、このレビューでは“post-acute COVID-19”という名称が使用されています。まだその病態の定義は明確でなく、このレビューではそれらの類似点と相違点が述べられています。
まずはME/CFSって何?
ME/CSFは有病率0.17~0.89%と稀な疾患で、女性に多くみられますが、その他の危険因子についてははっきりしていません。原因もまだはっきりしていませんが、感染症が引き金になっていると考えられています。ある大規模な調査で、837人のME/CFS症例のうち77%が発症前に発熱、上気道感染症状、インフルエンザ様症状、胃腸炎など感染症症状がみられていました。ただし感染症がどの程度の強さで影響しているのかはわかっていません。ストレスフルな出来事の後にも発症がみられていますが、重篤な外傷や手術など肉体的なストレスは原因とはなっていないようです。そもそも原因が全くわからないケースも多くみられます。
その病態も議論が多く、診断する上でのマーカーもなく、結果として25もの異なった診断基準がこれまで提唱されてきました。もっとも有名な基準は1994年に提唱されたCDCの基準ですが、疲労のみに重点を置きすぎていて、最も厳しいとされるICC基準に比べて5倍の有病率になってしまうと批判されています。2015年に出たInstitute of Medicineの基準では、5つの中核症状が提唱されています。①疲労、➁労作後の倦怠感、③認知機能の変化(記憶、集中力、情報処理の障害)、④睡眠障害(リフレッシュしない睡眠、昼夜逆転)、⑤起立性調節障害の5つですが、➁労作後の倦怠感が最も特徴的とされています。その他にも疼痛、感覚・運動障害、関節痛、消化器症状、頻尿、咽頭痛、リンパ節腫脹などがありますがこれらは必須条件ではありません。症状は休息をとっても改善しないことが特徴で、血液検査などで明らかな異常所見がなく、症状が6ヶ月以上持続することとされています。
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COVID-19 and post-infectious myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: a narrative review. Ther Adv Infect Dis. 2021 Apr 20;8:20499361211009385. doi: 10.1177/20499361211009385. eCollection 2021 Jan-Dec