コロナ後遺症って慢性疲労症候群?その6

COVID-19とME/CFS

これまでの調査ではpost-acute COVID-19の症状持続期間を発症後3週間以上としてきましたが、いくつかの症例報告では4ヶ月以上長引く症状を報告しています。様々な慢性症状、具体的には疲労、呼吸困難、関節痛、筋肉痛、睡眠障害、集中力低下、記憶障害、咳、嗅覚障害、不安、頭痛、発熱、めまいが報告されています。多くのpost-acute COVID-19患者の経験報告では、身体活動やストレスにより増悪する深刻な疲労や認知機能変化が述べられています。これらの症状は感染症後のME/CFSと一致していますが、COVID-19をME/CFSの原因感染症とするデータはまだ限られています。

現在post-acute COVID-19の正確な発症率や予想される罹病期間は調査中です。いくつかの研究はCOVID-19感染後の75%の症例に、7から12週のフォローアップ中に少なくとも1つ以上の持続する症状を認めました。最近のpost-acute COVID-19症状に関する28研究のシステマティックレビューでは、3週間以上持続する最も頻度の高い症状として疲労、呼吸困難、嗅覚障害を挙げています。しかしながら、症状の期間、患者数、フォローアップの期間がこれらの研究の間で変動が大きく、フルリカバリーは13~86%、フォローアップ期間も30~186日となっています。

ME/CFSの診断基準によってpost-acute COVID-19を調査する観察研究はまだありません。しかしながら、持続する疲労感の頻度の高さはME/CFSに大いに関係していると考えられます。入院したCOVID-19患者1,733名の大規模な前向きコホート研究では、退院後6ヶ月の時点でうち63%に依然疲労感や筋肉痛を認めています。しかし慢性的な疲労のみではME/CFSと診断するには不十分です。労作後の倦怠感や認知機能の変化といったME/CFSの鍵となる他の症状を調査する研究が診断を確立するために必要でしょう。

 これまでのコロナウイルスのアウトブレイクに見られたように、呼吸困難は最も共通して持続する症状であり、1~6ヶ月までのフォローアップ期間に入院患者の56%に見られています。ME/CFSでは呼吸困難と運動不耐性は主に起立性障害と認識されています。一方COVID-19感染では明確ではなく、肺検査における明確な異常所見が認められています。COVID-19感染後の患者では、半分以上に肺機能検査における拘束性肺障害や画像検査異常が認められますが、これらの所見は初期の重症度や感染の身体への負荷とは関係していません。つまり身体所見に不釣り合いな呼吸困難が、ME/CFSに合致する頻脈や血圧低下のような姿勢に伴う症状なのか、体調不良やウイルス性肺障害などのような他の因子に引き続いておこるものなのか明確ではないということです。

いくつかの研究で症状の持続と、年齢、重症度、女性との関連が認められています。他に考えられた危険因子として民族、精神状態、併存症の数、肥満はpost-acute COVID-19感染と一貫した関連性はみられませんでした。ME/CFSと同様、症状が持続する症例と、軽快して元気になる症例を判別しうるバイオマーカーはありません。

…………………………………………………………………………………………………………………………

COVID-19 and post-infectious myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: a narrative review. Poenaru S, Abdallah SJ, Corrales-Medina V, Cowan J.Ther Adv Infect Dis. 2021 Apr 20;8:20499361211009385. doi: 10.1177/20499361211009385. eCollection 2021 Jan-Dec