コロナ後遺症って慢性疲労症候群?その8

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考察

COVID-19感染後にME/CFSを発症するエビデンスはEBVなど他のウイルスほど明確ではありません。post-acute COVID-19症状の研究では広範囲に持続的な疲労が認められていますが、その慢性疲労をME/CFSの他の中核症状や共通の病状との関連性において評価するという、ME/CFSの判断基準の使用をしていません。他の制約としてはME/CFSの診断基準のバラつきの大きさです。 ほとんどの感染後のME/CFSの研究は1994年のCDCの判断基準を使用しており、これは 、ME/CFSを特徴づける他の症状、例えば労作後の倦怠感、認識変化、睡眠障害、起立性調節障害を診断に必須の条件としていません。このことは感染後のME/CFSの診断において、個々の 慢性症状を関連付けることが困難になっています。COVID-19患者の感染後ME/CFS 診断におけるさらに大きな制約は、それが新興感染症のため、ME/CFSと診断するには6ヶ月のフォローアップ期間が求められているということです。

post-acute COVID-19におけるいくつかの症状は、重篤な病態そのものやステロイドなどの治療手段による副作用により引き続いている症状である可能性があります。例えば呼吸困難はME/CFSと診断された人々の36%にまで達しますが、これは体位性頻脈や低血圧などとともに、起立性調節障害の一種であると考えられています。しかしながら、COVID-19感染後の呼吸困難は起立性調節障害によるものとは明確に描かれておらず、実際のところ炎症性肺疾患に続発した肺線維化による可能性があります。これはpost-acute COVID-19患者は、肺の画像や機能検査の異常が臨床的に明確であることによって裏付けられるでしょう。

似たような所見がARDSの生存患者にも見られ、呼吸困難が肺の器質的異常によることを示唆しています。ARDSのその他の合併症、例えば筋肉量の低下、体調不良、ステロイドによるミオパチー、多臓器不全などは、長期の健康予後の悪化、慢性疲労、身体の機能低下と関係しています。これらのアウトカムとME/CFSの症状とは部分的には重なっています。ただし重要な点として、複数のpost-acute COVID-19の研究が指摘しているように、病態の重症度や慢性疲労の発現と、客観的な呼吸機能検査の測定値との間には関係は見られなかったということです。このことは、post-acute COVID-19患者やARDS生存者における慢性疲労や呼吸困難は、ME/CFSに見られるものとはまた別の病態であることを示唆しています。

 

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COVID-19 and post-infectious myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: a narrative review. Poenaru S, Abdallah SJ, Corrales-Medina V, Cowan J.Ther Adv Infect Dis. 2021 Apr 20;8:20499361211009385. doi: 10.1177/20499361211009385. eCollection 2021 Jan-Dec