どの階層にも発症しうるが、頻度の高いグループもある
慢性疲労症候群は全米で83万6千人~250万人の患者がいるとされ、すべての年齢、民族、性別、社会経済的背景の人々に及んでいますが、いくつかの特徴はあります。女性は男性の3倍多い発症率です。10~19歳、30~39歳に発症が多くみられています。発症の平均年齢は33歳ですが、77歳でも2歳でも発症しています。黒人やラテン系は発症や重症度の割合が比較的高くなっています。感染症が先行するケースが80%以上に見られ、病原体が確定した感染症患者の前向きの調査で、数ヶ月後5~13%が慢性疲労症候群を発症しました。またそれらは個発的にも集団発生としても起こっています。
メンタルと発症との関係がある可能性
発病前の気分障害、個人的なイベント、幼少期の不遇が慢性疲労症候群の発症と関係していることは以前から言われています。もっとも、判断基準があいまいなため慢性疲労症候群ではなくうつ病までも含んでいるといった研究上の限界があり、それらの知見は正確さを欠いている可能性があります。慢性疲労症候群を発症した後のメンタルヘルスは他の病気と大きく変わりませんが、うつ病よりはましだということです。慢性疲労症候群に見られる抑うつや不安の頻度は、障害を伴う他の慢性疾患と同じくらいです。
様々な活動への影響は大きく長期化するが、予後はまだ不詳
慢性疲労症候群は、職業、教育をはじめ社会的、個人的な活動を大いに制限してしまいます。その影響の程度は、関節リウマチ、多発性硬化症、うつ病、心疾患、がん、呼吸器疾患をしのぐほどです。重症度の分類を以下に示しますが、症状の幅の大きさが大変際立っています。
・軽症 移動やセルフケアが可能で、仕事も続けることができますが、他の活動を制限しなければなりません。
・中等症 移動能力が低下し、日常生活の基本的な活動が制限されます。頻回に休息を必要とし、通常仕事をすることができません。
・重症 ほとんど自宅にいます。洗顔やシャワーなど最低限の日常生活に限られます。知的活動も著しく障害され、車椅子生活のこともあります。
・超重症 ほとんど寝たきり状態で、日常生活はほとんど介助無しに行うことはできません。しばしば光や音など感覚刺激に対する極度の過敏性がみられます。
患者のうち多く見積もって75%は就労することができず、およそ25%は一貫して自宅内、もしくはベッド上での生活を送っています。重症度にはその時々によって変化があり、61%もの患者が、調子が悪い時には寝たきりになると報告しています。罹病期間は数年や、中には数十年に至るということが知られていますが、明確に予後を調べた研究はありません。研究はどれも症例数が少なかったり、ドロップアウトする割合が高かったり、フォローアップ期間が短かったり、他疾患の患者を含んでしまっていたり、回復の定義が不適切だったりという研究の限界が多くみられています。
症状は変動や再発もきたしやすい
ある系統的レビューは完全な回復の可能性をわずか5%と結論付けています。またある慢性疲労症候群の臨床基準では、50%の患者が発症後2年経ってもなお症状が持続していると見積もっています。他の報告では93%という数字もあります。症状が一時的に回復することも報告されていますが、再発もしばしばみられます。病勢は一進一退を繰り返していますが、全くゼロになることはないということが、もっとも典型的なパターンです。慢性疲労症候群の専門クリニックの報告では、長期間観察した960症例のうち84%に少なくとも1つの併存疾患が認められています。さらに多くの併存疾患がある場合には健康状態の悪化を招きやすくなります。
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Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Essentials of Diagnosis and Management. Lucinda Bateman, MD; Alison C. Bested, MD; Hector F. Bonilla, MD;
Bela V. Chheda, MD; Lily Chu, MD, MSHS; Jennifer M. Curtin, MD;
Tania T. Dempsey, MD; Mary E. Dimmock, BA; Theresa G. Dowell, DNP, MPT;
Donna Felsenstein, MD; David L. Kaufman, MD; Nancy G. Klimas, MD;
Anthony L. Komaroff, MD; Charles W. Lapp, MBME, MD; Susan M. Levine, MD;
Jose G. Montoya, MD; Benjamin H. Natelson, MD; Daniel L. Peterson, MD;
Richard N. Podell, MD, MPH; Irma R. Rey, MD; Ilene S. Ruhoy, MD, PhD;
Maria A. Vera-Nunez, MD, MSBI; and Brayden P. Yellman, MD. Mayo Clin Proc. November 2021;96(11):2861-2878 https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2021.07.004 www.mayoclinicproceedings.org