桂枝加附子湯

桂枝湯に附子を加える場合

桂枝湯証とは表虚証に属しますが、その虚の程度が重いと汗が止めどなく流れ出て皮膚が湿って冷えを生じます。また表虚に裏寒を伴うときには体内の陽気もまた不足するため悪寒、手足拘攣や疼痛、舌質淡、脈遅が現れてきます。この場合、桂枝湯原方のみを用いても不十分であり、附子を加える必要があります。これが「傷寒論」の桂枝加附子湯であり、「太陽病、汗を発して遂に漏れ止まず、其の人悪風し、小便難く、四肢微急し、以て屈伸し難き者は、桂枝加附子湯之を主る」と記載されてます。

附子

附子は鎮痛、強壮、強心を目的として用いられる生薬です。附子には心血管機能の改善、血液循環の増強、強心、血圧上昇、微小循環の調節、体温調節、胃腸機能の調節、鎮痛など多種類の薬理作用を有しています。附子には温陽・逐寒の効能があると考えられており虚寒症に多く用いられています。附子には毒性があるため薬量は中医学で一般に15g以内とされ、もし大量に用いる場合には乾姜や生姜を配合し、さらに2時間ほど久煎してその毒性を軽減させる必要があります。附子に関してはまた章を新たにして述べます。

桂枝加附子湯証とは

桂枝加附子湯証として、①桂枝湯証に冷汗、皮膚湿冷、発汗過多、脈弱浮大、舌淡白の証がみられるもの、②桂枝湯証で、比較的症状の強い関節痛、四肢拘攣を伴うもの、③寒疝、腹痛、身体痛、四肢の冷えなどがあって脈沈遅、舌質淡が見られるもの、が挙げられます。これらは「表虚寒証」に含まれます。

表虚寒証

「虚」とは全身の機能衰弱または局所の生体機能失調のことで、自汗、多汗、あるいは大便溏瀉、下痢が止まらない、性器出血が止まらないなどの症状を指します。「寒」は「熱」と相対し、生体反応の性質を表しています。「寒」とは生体のエネルギーが不足していることで、生理機能や新陳代謝が低下していることを指し、これによって寒気や冷え、尿の性状が透明で量が多いなどの証が出現します。一方で「熱」とは、生体のエネルギーが過剰になっていることで、生理機能と新陳代謝が亢進することを指します。このため熱いものを嫌がり冷たいものを好む、顔が赤く息遣いが荒い、尿の色が濃いなどの証が現れます。虚証と寒証は臨床現場でよく同時に見られ、これを「虚寒証」といいます。この証は体内の陽気が不足したことによって生じたもので、桂枝加附子湯証はこのうち「表虚寒証」に属します。

桂枝加附子湯の適応

桂枝加附子湯は、虚弱な老人の感冒時、あるいは陽虚の人の感冒で多汗、四肢の冷えが見られる場合に用いられます。また、自律神経失調による著明な自汗症例にも、桂枝加附子湯証がみられることがあります。例えば難治性自汗で、悪寒して四肢が冷える、精神疲労・倦怠感、顔に艶がない、舌質淡嫩、脈細虚無力などを伴う症例が典型的と言えます。また、汗が漏れて止まらないということと同様に、アレルギー性鼻炎で薄い鼻水が止まらないほど多いんもの、女性で稀薄で多量の帯下がみられるものなどにもこの証がみられやすく、四肢が冷え、汗が多い場合や、普段から体が虚弱で汗をかきやすい場合には桂枝加附子湯に効果が期待できます。さらに、各種の関節炎による関節痛や坐骨神経痛にも用いられます。吉益東洞は桂枝加附子湯に朮を加えて桂枝加朮附湯として関節腫痛に用いました。関節腫痛に浮腫を伴う場合には後述する桂枝加芍薬知母湯が適応になります。

 

参考文献:黄煌著「KAMPO十大類方」メディカルユーコン社