前は3月に会ったねえ
ブログ更新は年3回に変わったんだね
これからは週1回は更新します!
いや、せめて隔週に1回は!
ええと、忙しい時は3週間に1回になるかも…
ゴロゴロしてて論文読んでないからね
イラー
ウケるww
やる気ない犬は帰ってヨシ!
eGFRdiffは様々な疾患リスクと関連する
長らく更新できずにおりましたが…
本日は
糖尿病患者さんのeGFRdiffで細小血管合併症の発症リスクが予測できる?!
という論文をご紹介します。
ワクワクしますね!
僕はどっちかというとbiffが好きだな
ディファレンスは「差」という意味ですね
腎機能の指標としてクレアチニンを用いたeGFR(eGFRcr)が広く用いられていますね。
しかし実はeGFRcrは腎機能以外の多くの要因の影響を受けます。
例えば筋肉量の多い人やタンパク質摂取量が多い人、甲状腺機能が亢進している人ではクレアチニン産生が増加することによりeGFRcrが低下して実際の腎機能を反映しない(腎機能を過小評価してしまう)ことがあります。筋肉量の少ない高齢者では逆のことが起こります。
このため臨床現場では、eGFRが実際の腎機能を反映していない可能性が考えられた場合には、他の影響を受けにくいシスタチンCを用いたeGFRcysも測定して総合的に判断することがあります。
eGFRの算出方法にはクレアチニンを使ったやつとシスタチンを使ったやつがあるんだね
これら2つのeGFRの値が乖離することがあります
この差のことをeGFRdiffと呼ぶようです
eGFRdiffの絶対差はeGFRcysからeGFRcrを引いて算出されますが、このeGFRdiffが大きな負の値をとる場合
(<-15mL/min/1.73m²)に様々な疾患のリスクが上がることが知られています
心不全とか冠動脈疾患、腎臓病、認知症、フレイルのリスクが高かったり…
eGFRdiffが大きい人では糖尿病細小血管障害の発症リスクが高い
この研究ではeGFRdiffと糖尿病細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)との関連について調べられました。
これはイギリスのバイオバンクに参加している糖尿病患者のデータを使用した前向きコホート研究です。
糖尿病を持つ人のうち糖尿病合併症がない25,825人を対象として13.5年間(中央値)の追跡が行われ、糖尿病細小血管障害の発症は電子健康記録(EHR)により確認されました。
eGFRdiffは絶対差(eGFRabdiff)と比(eGFRrediff)の両方で計算され、Cox比例ハザード回帰モデルを用いてeGFRdiffと糖尿病細小血管障害(DMCs:diabetic microvascular complications)リスクとの関連が検討されました。
※eGFRabdiff:eGFRcys-eGFRcr
※eGFRrediff:eGFRcys/eGFRcr
13.6年の追跡期間で25,825人のうち5,753人がDMCs(網膜症2,752例、腎症3,203例、神経障害1,149例)を発症しました
下図はGFRdiffとDMCsリスクの用量反応曲線です
線が多くてわかりにくいわ
スー… ハー(深呼吸)
モッさんでもわかるように解説しますね
GFRdiffの絶対値とDMCsの関係が示されています
横軸がGFRdiff、縦軸がDMCsリスクハザードです
横軸の赤い丸印がゼロの地点、つまりGFRcysとGFRcrが同じ値の地点ですね
オレンジの点線がGFRdiffが-15のラインです
下の段はeGFRdiffの相対値とDMCsの関係を示した図です
紫の点線がeGFRcys/eGFRcrが0.6のラインですが、これも比率が下がるほどDMCsのハザード比が高くなっていますね
説明が長すぎて途中寝ちゃったけど
つまり…
あれ?合ってる?
そこは混乱しないはずですが
本研究の参加者のうち58.2%の人がeGFRdiff-15~+15の範囲に入っており、38.9%の人が-15より小さい値でした
結果をまとめると…
eGFRdiffが大きいほどDMCsおよびその各サブタイプ(網膜症、腎症、神経障害)のリスクが高いという結果でした。
eGFRabdiffが1SD減少するごとに、DMCs全体で28%、網膜症14%、腎症56%、神経障害29%の発症リスク増加、 eGFRrediffが10%減少するごとに、DMCs全体で16%、網膜症8%、腎症29%、神経障害17%の発症リスク増加が認められました。
年齢、性別、人種、HbA1c、糖尿病罹患期間、血圧、脂質プロファイルなどのリスク因子を調整してもeGFRdiffとDMCsの関連は有意でした。
eGFRdiffにより、その人の合併症進行のリスクが高いか予測できるってこと?
eGFRdiffは単なる腎機能の指標ではなく全身の代謝や炎症の状態などを反映しているのではないかと考えられています
そのため色々な疾患や病態の予測因子となる可能性が期待されています
ただし、この研究はあくまで観察研究なので因果関係の証明はできないことに注意が必要ですね
ああ、今日も素晴らしい論文に出会いました!
でも僕の出番も多くてよかったよ(僕のファンが喜んでいるはず!)
※わが国ではGFRsysは医師が必要と判断した特定の病状の方のみ受けられる検査ですのでご注意ください。
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The Difference Between Cystatin C- and Creatinine-Based Estimated Glomerular Filtration Rate and Risk of Diabetic Microvascular Complications Among Adults With Diabetes: A Population-Based Cohort Study.Diabetes Care. 2024 May 1;47(5):873-880.