疾病負荷研究(GBD:Global Burden of Disease)とは?
GBDはGlobal Burden of Diseaseの略ですね。 GBDは一般に「世界疾病負荷研究」と言われています。
ダイアベテス、ダイアリーなら、GDDだよ!
疾病負荷、とはあまり聞きなれない言葉ですよね。
簡単に言うとある病気(やけが)による健康障害が個人や集団に与えた影響を数値化したものです。
得られたデータを地域別、年齢別、疾患別、リスク因子などにより分類して比較することで、その病気が与えるインパクトや関連因子、地域性などを知ることができます。
さらに医療政策や新規治療の費用対効果などを評価するためにもよく使用されています。
このような研究をまとめて「疾病負荷研究」というようです。
一般に質調整生存年 (QALYs) または障害調整生命年 (DALYs) という指標を用いて数値化されることが多いようです。
QALYsやDALYsは健康状態やQOLをあらわす指標であり「健康統合指標」とも言われます。
健康状態やQOLをあらわす指標:QALYs(質調整生存年)
そして、ある期間におけるQALYを加算し健康状態を数値化したものが疾病負荷の指標として使用されています。
この考え方では、
完全な健康状態で5年間を過ごす(1QALY×5年=5)ことと、0.5の健康状態で10年間を過ごす(0.5QALY×10年=5)ことは同じ価値があるとして算定されます。
健康状態やQOLをあらわす指標:DALYs(障害調整生命年)
DALYsは早死と障害によって健康な時間が失われた年数をあらわします。つまり1 DALYは完全に健康な状態で過ごすはずだった人生を1年失ったことを意味します。
具体的には、DALY=損失生存年数(YLL)+障害生存年数(YLD)として算出されます。
YLLは、病気などにより(理想の寿命から)失ってしまった年数×死亡数、YLDは障害を受けた年数×障害の程度×人数になります。
(※YLDは、障害の程度により重みづけがされ計算式に反映されます)
リスク因子に起因する世界がん負担研究(GBD2019)
さて、前置きが長くなりましたが、
「世界疾病負荷研究」は、米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)が中心となって、米国、英国および豪州の大学、東京大学、世界保健機関(WHO)の共同プロジェクトとして1990年に開始されました。
現在では、150以上の国の大学、研究所、研究機関が参加する壮大な共同研究になっています。
ほぼ毎年データが更新され、そのたびに新しい研究結果が発表されています。
今日ご紹介するのは世界のがん負担についてのデータです。
GBD 2019データを用いて、環境、職業および代謝異常、行動などに関連したリスク因子に起因するがんについて、2019年のがん死亡とDALY、リスク因子に関連する癌種、さらに2010年からの変化が報告されました。
まず、すべてのリスク因子(下図参照)に起因する世界のがん死亡は全がん死亡の44.4%、
すべてのリスク因子に起因するがんDALYは全がんDALYの42.0%を占めました。
(※リスク因子とがんの関係についてはWHOの一機関である世界がん研究基金(WCRF)による基準が使用されているようです。)
では、がんDALYsのリスク因子にどんなものがあるか見ていきましょう。
下図は2019年のデータです。
右側の図ではがん負担が高い順にリスク因子が並んでるのかな?
男性(上段)ではタバコが圧倒的に高いリスク因子になっていますね。
女性(下段)でもタバコが一番多いですが、そのほかにも様々なリスク因子が関連していますね。
青色が肺がん、緑系統が消化器・肝臓がん、ピンク系統が口腔・咽喉頭がん、
下段の紫系統が女性器のがん、乳がんをあらわしています。
(細かい癌種は一番右の凡例をご参照ください)
高BMIや空腹時血糖高値も癌のリスクになるのですね。
右側を見ると、これらのリスク因子と関連する癌種は多岐にわたっていることもわかりますね。
がん負担が増加しているリスク因子は高BMIと高血糖
さらに各リスク因子によるがんDALYsの変化(2010年→2019年)を調べたのが下図です。
2010年に上位10項目であったリスク因子に起因するがんDALYs(年齢で調整後)は、ほとんどのリスク因子において2019年には低下傾向でした。
しかし代謝関連のリスク因子、すなわち高BMIと空腹時血糖に起因するがんDALYsは上昇していました。
肥満や高血糖、糖尿病は心血管病だけでなく癌にも深く関わっていることがより実感される報告でした。
(カレー食べたい)
今日はカレーとかデリーとか前置きが長すぎたわ!
クオリーとダリねw
(※大変情報量の多い論文であり今回はその一部のみ抜粋して紹介しています)
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The global burden of cancer attributable to risk factors, 2010-19: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019.Lancet.2022.20; 400(10352):563-591