高血糖と肥満に起因するがんは増え続けている(GBD2019:世界疾病負荷研究より)

疾病負荷研究(GBD:Global Burden of Disease)とは?

ガジガジDr.
ガジガジDr.
GBDって聞いたことありますか?

ガジガジ…、
ダイアベテス、ダイアリーなら、GDDだよ!
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
残念ながらガジガジのGではありません。

GBDはGlobal Burden of Diseaseの略ですね。

GBDは一般に「世界疾病負荷研究」と言われています。


疾病負荷?
モッさん
モッさん

疾病負荷、とはあまり聞きなれない言葉ですよね。

簡単に言うとある病気(やけが)による健康障害が個人や集団に与えた影響を数値化したものです。

得られたデータを地域別、年齢別、疾患別、リスク因子などにより分類して比較することで、その病気が与えるインパクトや関連因子、地域性などを知ることができます

さらに医療政策や新規治療の費用対効果などを評価するためにもよく使用されています。

このような研究をまとめて「疾病負荷研究」というようです。

疾病負荷をどうやって数値化するの?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
いい質問ですね!

一般に質調整生存年 (QALYs) または障害調整生命年 (DALYs) という指標を用いて数値化されることが多いようです。

QALY? クワ…?
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
クオリー(ズ)と呼びますね。

QALYsやDALYsは健康状態やQOLをあらわす指標であり「健康統合指標」とも言われます。

健康状態やQOLをあらわす指標:QALYs(質調整生存年)

ガジガジDr.
ガジガジDr.
QALYでは、ある人について1年を単位としてその健康状態を0~1の値で算定します。

1と0の違いはなに?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
完全な健康状態で1年間過ごした場合に1QALYと定義されます。一方、死亡は0になります。

たとえば病気の人ではQALYが0.5とか0.4とかになるってこと?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですね。動作や日常生活への影響、からだの痛みや心理的負担(不安感など)についての質問紙により、病気がその人へ与える影響が数値化されQALYが決定されます。

そして、ある期間におけるQALYを加算し健康状態を数値化したものが疾病負荷の指標として使用されています。

この考え方では、

完全な健康状態で5年間を過ごす(1QALY×5年=5)ことと、0.5の健康状態で10年間を過ごす(0.5QALY×10年=5)ことは同じ価値があるとして算定されます。

健康状態やQOLをあらわす指標:DALYs(障害調整生命年)

ガジガジDr.
ガジガジDr.
では、DALYsについても簡単に説明しますね

DALYsは早死と障害によって健康な時間が失われた年数をあらわします。つまり1 DALYは完全に健康な状態で過ごすはずだった人生を1年失ったことを意味します。

QALYと逆っぽいね
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
厳密には逆ではないのですが、イメージとしてはそうですね。

具体的には、DALY=損失生存年数(YLL)+障害生存年数(YLD)として算出されます。

YLLは、病気などにより(理想の寿命から)失ってしまった年数×死亡数、YLDは障害を受けた年数×障害の程度×人数になります。

(※YLDは、障害の程度により重みづけがされ計算式に反映されます)

リスク因子に起因する世界がん負担研究(GBD2019)

さて、前置きが長くなりましたが、

「世界疾病負荷研究」は、米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)が中心となって、米国、英国および豪州の大学、東京大学、世界保健機関(WHO)の共同プロジェクトとして1990年に開始されました。

現在では、150以上の国の大学、研究所、研究機関が参加する壮大な共同研究になっています。

ほぼ毎年データが更新され、そのたびに新しい研究結果が発表されています。

今日ご紹介するのは世界のがん負担についてのデータです。

GBD 2019データを用いて、環境、職業および代謝異常、行動などに関連したリスク因子に起因するがんについて、2019年のがん死亡とDALY、リスク因子に関連する癌種、さらに2010年からの変化が報告されました。

なに言っているかわからんわ。
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
結果です♪

まず、すべてのリスク因子(下図参照)に起因する世界のがん死亡は全がん死亡の44.4%、

すべてのリスク因子に起因するがんDALYは全がんDALYの42.0%を占めました。

(※リスク因子とがんの関係についてはWHOの一機関である世界がん研究基金(WCRF)による基準が使用されているようです。)

全部のがんの半分くらいが、なんらかのリスク因子に起因していると考えられてるってことかな?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですね。

では、がんDALYsのリスク因子にどんなものがあるか見ていきましょう。
下図は2019年のデータです。

 

 

ごちゃごちゃして見にくいわ…。まあ、色だけはカラフルできれいだけどね!
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
(こんな偉大な論文にそんなこと言うなんて…モッさん恐るべし…)

これ、すごいデータだね!
右側の図ではがん負担が高い順にリスク因子が並んでるのかな?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうでしょう、興味深いですよね!
男性(上段)ではタバコが圧倒的に高いリスク因子になっていますね。
女性(下段)でもタバコが一番多いですが、そのほかにも様々なリスク因子が関連していますね。

ガジガジDr.
ガジガジDr.
図の右側は各リスク因子と関連した癌種の内訳になっています。

青色が肺がん、緑系統が消化器・肝臓がん、ピンク系統が口腔・咽喉頭がん、

下段の紫系統が女性器のがん、乳がんをあらわしています。

(細かい癌種は一番右の凡例をご参照ください)

ガジガジDr.
ガジガジDr.
たとえば男性(上段)をみると、タバコでは肺がんが多く、アルコールでは肝臓がんと消化器系統のがん、咽喉頭がんが多いですね。

黄色の枠は?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
ここに注目してほしいのです!
高BMIや空腹時血糖高値も癌のリスクになるのですね。
右側を見ると、これらのリスク因子と関連する癌種は多岐にわたっていることもわかりますね。

がん負担が増加しているリスク因子は高BMIと高血糖

さらに各リスク因子によるがんDALYsの変化(2010年→2019年)を調べたのが下図です。

 

2010年に上位10項目であったリスク因子に起因するがんDALYs(年齢で調整後)は、ほとんどのリスク因子において2019年には低下傾向でした。

しかし代謝関連のリスク因子、すなわち高BMIと空腹時血糖に起因するがんDALYsは上昇していました。

ガジガジDr.
ガジガジDr.
つまり、現在わかっているリスク因子を減らす取り組みによりがん負担を減らせている部分もありますが、肥満や高血糖に起因する癌負担の割合は増加しているということですね…

肥満や高血糖、糖尿病は心血管病だけでなく癌にも深く関わっていることがより実感される報告でした。

まあ、重要な報告だと思うけど…
今日はカレーとかデリーとか前置きが長すぎたわ!

(カレー食べたい)

モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
…すみません。私もこのあたりが不勉強だったもので。

モッさん、
クオリーとダリねw
まる
まる

(※大変情報量の多い論文であり今回はその一部のみ抜粋して紹介しています)

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The global burden of cancer attributable to risk factors, 2010-19: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019.GBD 2019 Cancer Risk Factors Collaborators. Lancet.2022.20; 400(10352):563-591

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