感染症リスクが上がらない高齢者糖尿病のHbA1cは8%未満?

ガジガジDr.
ガジガジDr.
あけましておめでとうございます!
ガジガジDr.
ガジガジDr.
みなさんは
お正月ゆっくりできましたか?
あ、モッさんはいつもゆっくりしてますね。
先生、今年もモッさんに厳しいね~!
まる
まる
(イライライライラ…。)
仕事ばっかりしてたら
心が貧しくなるんだぞ!
モッさん
モッさん

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
お正月は
おいしいもの食べましたか?
食べたよ!!
いつもは石ころみたいなやつ(注釈:ドッグフード)を食べてるんだけどさ
モッさん
モッさん
元旦のディナーは
~一切の混ざり石なしデビフのラム肉ソテー ベジソース掛け(注釈:犬用缶詰、汁ごと)、オーストラリア産鶏ささみチップスを添えて(注釈:犬用ふりかけ)~

だったんだよ! ドヤ!!

モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
それは…
本当にすごい… いいお正月でしたね…。
ワオーン(感嘆)

高齢者糖尿病患者のHbA1cと感染症リスクの関係

さて、今日は「高齢糖尿病患者におけるHbA1cと感染症リスクの関係」についての論文をご紹介します。

ガジガジDr.
ガジガジDr.
高齢の糖尿病患者さんでは低血糖のリスクを避けるためにも血糖マネジメントの目標が緩めに設定されていますね。
日本でも高齢者糖尿病に対する血糖コントロール目標のガイドラインがあったよね。
まる
まる
ガジガジDr.
ガジガジDr.
まるさん、よく知っていますね。
下図が糖尿病学会による高齢者治療ガイドラインであり、
低血糖リスクの高い薬剤を使用している人や、ADLが低い人、認知症を有する人では目標HbA1cが高めに(HbA1c8%未満)設定されています。

さらに低血糖リスクの高い薬剤を使用している人ではHbA1cの下限値も設定されています。

欧米のガイドラインにおいても高齢者のHbA1c目標値は幅を持たせてあり、かつ緩め(HbA1c6~9%)に設定されています。

 

 

でも血糖値が高いと免疫能が低下して風邪とかひきやすくなるんだよね。
HbA1cはやっぱり7%未満にしておかなきゃ!
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
それは重要なポイントですね!
えっ?そう?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
モッさんのいうとおりHbA1c7%以上では免疫能を低下させて感染症にかかりやすくなってしまうのでは、という意見もあり、特に高齢者の目標HbA1cにおいて十分なコンセンサスは得られていません。

HbA1c7%と8%では感染症リスクに差があるか?

先述のように高齢者ではその背景により緩徐な血糖マネジメントが推奨される場合もあります。

HbA1c8~9%以上では感染リスクが上がることは多くのデータによりすでに証明されていますが、比較的厳格なマネジメント(HbA1c6~7%)と、緩めのマネジメント(7~8%)における感染症リスクの差についてはまだ意見が分かれるところであり、本研究はこの点を明らかにするために行われました。

研究デザインです。ワクワク♪(先生の真似)
モッさん
モッさん

HbA1c 6.0~6.9%、7.0~7.9%、8.0~8.9%の高齢者糖尿病患者の感染症入院リスクを比較

65才以上の2型糖尿病患者さん103242人を対象としたレジストリ研究です。

米国カリフォルニア州のKaiser Perma nente Northern California(KPNC)のデータを用いて2019年1月~12月の間にHbA1cが測定されている65歳以上の2型糖尿病患者が対象です。

(注釈:KPNC アメリカの大規模な統合型医療システムであり1993年より糖尿病レジストリを運営しています。医療研究において信頼性の高いデータソースとして評価されています。)

このうち過去2年間に健康保険の未加入期間がある患者、1型糖尿病患者、末期腎不全患者、ベースラインのHbA1cデータがない/入院後3ヶ月以内のデータである、HbA1c6%未満もしくは9%以上の患者などは除外され、最終的に103,242人が解析対象となりました。

対象はHbA1c6.0~6.9%群(基準群)、7.0~7.9%群、8.0~8.9%群に分類、1年間追跡され、感染症による入院率が比較されました。

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
主要アウトカムは4つのカテゴリーにおける入院です。

4つのカテゴリーとは ①呼吸器感染症②泌尿器生殖器感染症③皮膚・軟部組織・骨感染症④敗血症 です。

 

結果だね♪
まる
まる

HbA1c8.0以上では皮膚・軟部組織・骨感染症、HbA1c9.0以上ではすべての感染症による入院リスクが上昇した。

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
対象患者103,242名のうち3.6%が4つのカテゴリーのいずれかの感染症で入院しました。

各群(HbA1c  6.0~6.9%:基準群、7.0~7.9%、8.0~8.9%)の感染症入院率を示したものが下図です。

HbA1cの各群青のバーが全体、黄緑がHbA1c  6.0~6.9%群(基準群)、緑がHbA1c  7.0~7.9%群、赤がHbA1c  8.0~8.9%群ですね。

 

 

うーん…
よくわからないけど、
どのグラフも赤色の背がちょっと高いね。

あとは同じかな?

モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
グラフではそのように見えますね。

交絡因子を調整すると、

全体および①②③のカテゴリーではHbA1c 7.0~7.9%群、HbA1c 8.0~8.9%群ともに感染症入院リスクは基準群との差を認めなかったようです。

皮膚・軟部組織・骨感染症でのみHbA1c 8.0~8.9%群で基準群と比較して有意に感染症入院リスクが上昇していました(RR1.33)

つまり33%も入院リスクが上昇したということですね。

(※交絡因子:年齢、性別、BMI、糖尿病治療薬、網膜症、腎機能、末梢血管障害/切断歴、ステロイド使用、医療費支援の有無など)

まる
まる
なるほど…
HbA1c8%未満であれば高齢者の感染症入院リスクは全カテゴリーで上がらなかったんだね!
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうなんです。
ただしこの研究では、
低血糖頻度などについては検討されていないためその点には留意が必要ですね。

 

高齢者糖尿病患者さんの感染症リスクを上げないための最低限のラインとしてまずHbA1c8(~9)%未満を念頭に置き、安全に血糖値を下げられる場合はさらに低いHbA1cを目指すのがよいかもしれません。

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
年始もいい論文に出会えました!

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Kasia J. Lipska, Lisa K. Gilliam, Catherine Lee, Jennifer Y. Liu, Vincent X. Liu, Howard H. Moffet, Melissa M. Parker,Heidi Zapata, and Andrew J. Karter. Diabetes Care 2024;47:2258–2265

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