週1回のインスリン製剤~アイコデック(icodec)~

 

 
Gajigaji Dr.
とうとうウィークリーインスリンの時代がやってきました!!
そう遠くない将来、週1回注射の基礎インスリンが使えるようになりそうです!
インスリンの名前はicodec(アイコデック、アイコデク)
インスリン構造に長い脂肪酸を付加することと、3カ所のアミノ酸置換を行うことにより、アルブミンとの結合をさらに強固にして、クリアランスを低下させ、半減期を長くしたインスリンです。
(脂肪酸の付加と言えば、オゼンピックみたいですね)
 
Gajigaji Dr.
最大の血中濃度に達する時間は16時間、半減期はなんと1週間とのことです。
この新しいインスリンの臨床効果についての第2相試験の結果をご紹介します。
2020年9月にpublishされた報告です。

週1回のインスリン製剤アイコデックと、1日1回投与のグラルギンのランダム化比較試験(ダブルダミー盲検)

アイコデク週1回注射と、グラルギン1日1回注射の対決です。

対象は、今までインスリン治療を受けたことがない(妊娠糖尿病時のインスリン治療歴を除く)、もしくは非常に短いインスリン治療歴(14日以内)で、HbA1c 7.0~9.5%の、メトホルミン内服中(±DPP4阻害薬)の2型糖尿病患者さんです。

 
Gajigaji Dr.
下図が研究デザインですね。
 

対象者を、①アイコデック群(125人)、➁グラルギン群(122人)に無作為に分けて、26週間インスリン投与を行いました。

 
Gajigaji Dog
でも、ウィークリー製剤とデイリー製剤だから、どちらのインスリンを使っているか患者さんがわかっちゃうね。
 
Gajigaji Dr.
いえいえ、そこがうまく考えられているんです。
グラルギン群に割り付けられた人は、毎日注射するグラルギンに加えて、アイコデックと見分けがつかないウィークリー製剤(偽薬)も週1回注射します。
アイコデック群に割り付けられた人も、週1回注射するアイコデックに加えて、グラルギンと見分けがつかないデイリー製剤(偽薬)も毎日注射します。
なにを比較したかについては、
主要評価項目として、26週後のHbA1c の変化(どちらがより下がったか?)
副次評価項目として、1日9回の血糖自己測定による血糖値の平均、体重、早朝空腹時血糖、インスリン量、リブレ(持続グルコースモニター)による血糖値、などが比較されました。
 
Gajigaji Dog
インスリンって、どうやって調節したの?1週間に1回のインスリンと毎日打つインスリンだと、使う量が違いそうな気が…. 
 
Gajigaji Dr.
ごくたまにいい質問しますね
 
まず、デイリー製剤は10単位/日、ウィークリー製剤は70単位/週から開始します。
 
Gajigaji Dog
70単位!ちょっと怖い。
その後は血糖自己測定の結果により、このようなルールで週に1回、調整されました。
*インスリン調整日とその前2日間の朝食前血糖の平均が、108~126mg/dLであれば、ウィークリー製剤は14単位増量、デイリー製剤は2単位増量します。
*126mg/dLを超えていれば、ウィークリー製剤は28単位増量、デイリー製剤は4単位増量します。
*逆に、調整日とその前2日間で、血糖54mg/dL以下(54-69mg/dL)が1回でもあれば、ウィークリー製剤は28(14)単位、デイリー製剤は4(2)単位減量します。
 
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さあ、結果です♪

アイコデックの週1回投与では、グラルギンの連日投与と同等のHbA1c低下効果を認めた。

まず、主要評価項目の結果です。(下図)

ギリギリ有意差はつかなかったのですが、アイコデック群の方がHbA1c低下度が大きい傾向ですね。

少なくとも、アイコデック週1回注射は、グラルギンの1日1回注射と同等にHbA1cを下げるという結果でした!

 

最終2週間の血糖自己測定(1日9回測定)による血糖プロファイルでは、平均血糖はアイコデック群で有意に低い結果でした。(下図)

リブレでも、血糖が70~140mg/dLに収まっている時間は、アイコデック群で有意に長い結果でした!

 

インスリン量は、アイコデック群のほうが少ない結果でした(下図)。体重変化は差がありませんでした。

気になる低血糖については、54㎎/dL以下の低血糖や重症低血糖の発現率は差がなかったとのことです。

 

 
Gajigaji Dr.
1年に365回打っていた基礎インスリンが、なんと52回で済むうえに効果は同等という驚くべき結果でした。

患者さんの負担も減りますし、注射の受け入れや治療意欲にもよい影響を与える可能性が高いですね。

また、インスリン治療が必要だけれども、年齢や様々な事情によりインスリンを自己注射することができない場合にも、ウィークリーインスリンはかなり強力なサポーターになりそうですね!

 
Gajigaji Dog
早く使えるようになるといいなあ!

Rosenstock J et al. Once-Weekly Insulin for Type 2 Diabetes without Previous Insulin Treatment.N Engl J Med. 2020 Sep 22. doi: 10.1056/NEJMoa2022474

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