ゾルトファイとソリクア比較~日本人に最適な配合剤はどちら?

2020年10月4日に大幅加筆しました!

インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤は、お互いの弱点を補い合う

基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤が今年から使用できるようになっています。

なぜ、この配合剤が開発されたのでしょうか?

 
Gajigaji Dog
どうして、この2つの薬剤の組み合わせなんでしょう、先生?
 
Gajigaji Dr.
お互いの弱点を補い合い、各薬剤の効果が最大限に発揮されるベストな組み合わせだからでしょうね。
 

GLP-1受容体作動薬の弱点は、患者さんのすい臓からのインスリン分泌能が悪く、空腹時血糖(朝いちばんの血糖)が高い患者さんには、GLP-1受容体作動薬の十分な効果が発揮されないところでした。

一方、インスリンの弱点は、患者さんによっては少し体重が増えてしまうことでした。太り気味の患者さんにとっては、この点は大きな問題になります。

即ち、インスリン注射により、足らないインスリン分泌を補うことで空腹時血糖が下がる→GLP-1受容体作動薬の血糖改善効果と体重減少効果が十分発揮される、という感じでしょうか。

配合剤であれば1回の注射で済みますので、患者さんの負担を軽減できる薬剤でもあります。

日本ではゾルトファイ、ソリクアという2種類の配合剤が使用できる

  ゾルトファイ

 
Gajigaji Dog
このピンク、きれいな色だな~♪
何単位?いや、何mgくらいで使うのですか?
 
Gajigaji Dr.
「単位」でも「mg」でもありません。
 

投与量については、インスリンの「単位」の代わりに配合剤では「ドーズ」という用語が使われます。

1ドーズには、トレシーバ(インスリン)1単位およびビクトーザ(GLP-1受容体作動薬)0.036 mgが含まれます。

最大で1日50ドーズ(トレシーバ50単位、ビクトーザ1.8mg)まで使用できます。

ソリクア

1ドーズには、インスリン グラルギン1単位およびリキスミア(GLP-1受容体作動薬)1μgが含まれます。

最大で1日20ドーズ(グラルギン20単位、リキスミア20µg)まで使用できます。

どちらが日本人により適した薬剤か考える前に、まず2剤の違いを見ていきましょう。

GLP-受容体作動薬の違い:ビクトーザとリキスミアでは、血糖降下作用の強さとパターンが異なる

2型糖尿病患者さんに対して行われた、GLP-1受容体作動薬の比較試験をすべてまとめた、すごいレビューがあります。

下図の縦軸は、各色のGLP-1受容体作動薬を投与して、低下したHbA1c(%)ですね。

一番右(黄色で囲んだ部分)が、ビクトーザとリキスミアの比較試験です。

緑のバーがビクトーザ1.8mg、柿色のバーがリキスミア20ugです。(どちらも日本で使用できる最大量ですね)

Diabetes, Obesity and Metabolism 18: 317–332, 2016

この用量で対決すると、ビクトーザの方がHbA1c低下作用が大きいですね。

(ちなみに黄色がトルリシティ、青がビデュリオン、水色がバイエッタ)

 
Gajigaji Dog
じゃあ、ビクトーザの方が強いからいいね!
 
Gajigaji Dr.
でもね、リキスミアならではの特長もあるのです。
 

さらに、血糖を下げるパターンの違いに注目しましょう。

下図は、2型糖尿病患者さんに対して各薬剤を朝食前に注射したあとの、血糖値の変化を調べています。リキスミアを注射した場合は、驚くほど朝食後の血糖が上がりません。一方、空腹時血糖を下げる作用は、ほぼありません。

一方、ビクトーザは、空腹時血糖も食後血糖もバランスよく低下させていますね。

Diabetes Obes Metab 15: 642–649,2013

リスキミアとビクトーザは作用時間が異なるだけでなく、メインの作用が全く異なるので、同じGLP-1受容体作動薬とは思えませんね。

配合比率の違い:ゾルトファイとソリクアでは、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合比が大きく異なる

配合薬の厄介なところは、その比率が決まってしまっていることですね。

ゾルトファイで、ビクトーザの最大量である1.8㎎を投与するためには、同時にインスリン(トレシーバ注)が50単位入る計算になります。

一方ソリクアで、リキスミアの最大量である20µgを投与するためには、同時にインスリン(グラルギン注)が20単位入る計算になります。

そう考えると、インスリンに対するGLP-1受容体作動薬の比率はゾルトファイの方が少ない印象ですね。

ちなみに、ソリクアを含むリキスミアとグラルギンの配合剤について、海外で使用されている製剤の配合比率は日本と異なることをご存知でしょうか。

欧米では、LixiLan(リキスミアとランタスの配合剤)は、1:2や1:3で使用されています。すなわち、リキスミア20µgに対して、ランタス20単位、40単位の比率で使用されているのです。

一方、このソリクアは1:1配合であり、日本人に合わせた配合比に変更されているのですね。

 
Gajigaji Dog
僕には、犬缶9、ドッグフード1の配合比率が合っているんです。でも、いつもドッグフードばっかりたくさん入れられるんです!
 
Gajigaji Dr.
同じ犬として共感します。
 

ゾルトファイの国内臨床試験から見えてくる特徴

日本人2型糖尿病患者さんを対象としたトレシーバ、ゾルトファイ、ビクトーザの比較試験をご紹介します。

2型糖尿病患者さん(平均体重70㎏、BMI26)をトレシーバ群、ゾルトファイ群、ビクトーザ群にランダマイズして、12ヶ月後のHbA1cの変化を比較しています。

トレシーバ、ゾルトファイは、朝の空腹時血糖が72-90mg/dLになるまで増量していきます。ビクトーザは徐々に1.8mgまで増量していきます。

Diabetes Obes Metab. 21:2674-2683,2019

上図のように、もちろんゾルトファイ群で、一番よく血糖が下がったわけですが、ビクトーザも善戦していますね!トレシーバ群よりもHbA1cが下がっています。

これを見ると、ビクトーザ1.8mgは空腹時血糖を下げる力も結構強いですね。(あくまで内因性のインスリン分泌が保たれている患者さんにおいてはですが)

トレシーバ群では1年間で体重が4㎏増えましたが、ゾルトファイ群でも3㎏増えました。

ゾルトファイの平均投与量は27.7ドーズでした(トレシーバ群は34.8単位)。日本人にしては結構多いですね。空腹時血糖の目標がかなり厳しいことも影響していると思います。

この平均ドーズだと、ビクトーザは0.99㎎入っています。もう少し多く投与できれば、体重増加はもっと抑えられたかもしれません。

ソリクアの国内臨床試験から見えてくる特徴

それでは、日本人2型糖尿病患者さんを対象としたソリクアとランタスの比較試験を見てみましょう。

2型糖尿病患者さん(平均BMI26)を、ランタスもしくはソリクア群にランダマイズして、6ヶ月後のHbA1cの変化を比較しています。

ソリクアの方がかなりHbA1cが低下していますね(下図)

Diabetes Obes Metab. 2020 Online ahead of print

さらに、下図の血糖プロファイルは、ランタスとソリクアでかなり大きな違いがあります!(下図)

ソリクアでは朝食後血糖はほとんど上がらず、昼食後血糖もかなり抑制しています(黄色の楕円)。

Diabetes Obes Metab. 2020 Online ahead of print

ランタス群では6ヶ月で体重が1.3㎏増加、ソリクア群では0.26㎏の増加にとどまりました。ソリクアの平均投与量は15.1ドーズでした(トレシーバ群は17.3単位)。

このドーズだと、リキスミアは15.1ug入っています。20ugが最大量ですから、そこそこ多く入っていますね。

インスリン投与量と、食後高血糖の程度により使い分けるとよいかもしれない

今までのデータより、各々の患者さんに適した配合薬を考えてみます。

インスリン治療を行っている患者さんからの変更の場合は、

少ないインスリンで空腹時血糖がコントロールできており、食後血糖がHbA1cを押し上げている患者さんにはソリクアを検討してもよいと思います。リキスミアの食後血糖抑制効果(特に朝食後)はかなり強力です。

一方、インスリン投与量が多い、空腹時血糖がなかなかコントロールできない患者さんにはゾルトファイでしょうか。

経口薬からの導入の場合は、インスリン必要量の予測は難しいですが、インスリン抵抗性が高い、空腹時血糖が高い、といった「インスリンがたくさんいりそう」な患者さんについては、ソリクアは最大20ドーズまでしか投与できないので、ゾルトファイが望ましいかもしれません。

 
Gajigaji Dog
じゃあ、インスリン量が少ない患者さんでは、ゾルトファイは向かないんだね。
 
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いえ!目的により、適する場合も多くあります。

最後にゾルトファイのGLP-1受容体作動薬の配合比率が少なめであることについて少しお話ししたいと思います。

インスリン投与量がそれほど多くない場合、例えば10単位のゾルトファイを投与した場合ビクトーザは0.36㎎入ります。

これはビクトーザの開始用量と同程度ですので、「こんな量では効かないでしょ」と思われるかもしれませんが、案外そうではないようです

例えば、DPP-4阻害薬とビクトーザ0.3㎎の血糖改善効果は同等であると報告されています。また少量のGLP-1受容体作動薬が、インスリン治療による体重増加を抑えてくれる可能性が十分にあります。

考え方を転換すれば、低用量のGLP-1受容体作動薬は、高用量で使用するほどの強い効果を認めないものの、消化器症状や過度の食欲低下(特に高齢者)を心配せずに、マイルドな効果を期待できるというメリットがあります。

このように、インスリン治療に伴う体重増加を抑制したい、経口薬を1剤減らしたいという目的で少量のGLP-1受容体作動薬を併用する治療も、今後一つの選択肢になりますね。

最後に、(一部の)GLP-1受容体作動薬では、心血管や腎臓の保護作用が認められています。

この点も考慮すると、2型糖尿病患者さんにインスリンを導入する際には、この配合剤から開始することも増えそうですね。

Superior Efficacy With a Fixed-Ratio Combination of Insulin Degludec and Liraglutide (IDegLira) Compared With Insulin Degludec and Liraglutide in insulin-naïve Japanese Patients With Type 2 Diabetes in a Phase 3, Open-Label, Randomized Trial. Kaku K et al. Diabetes Obes Metab. 21:2674-2683,2019

Efficacy and safety of insulin glargine/lixisenatide fixed-ratio combination (iGlarLixi) in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus inadequately controlled on basal insulin and oral antidiabetic drugs: The LixiLan JP-L Randomized Clinical Trial. Kaneto H et al. Diabetes Obes Metab. 2020 Feb 19. doi: 10.1111/dom.14005. Online ahead of print.

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