オゼンピック(セマグルチド注射薬)の臨床試験データ総まとめ ◇ビクトーザ・トルリシティとの比較◇

2型糖尿病患者さんに使用する、インスリン以外の唯一の注射薬であるGLP-1受容体作動薬、そのなかでも最も高い効果が期待されているオゼンピックについて、臨床試験データの総まとめを一瞬で紹介します。

GLP-1受容体作動薬とは、膵臓や消化管に働きかけて、血糖を下げてくれるだけでなく、体重減少効果もある薬剤です。さらに、最近では、糖尿病患者さんの心臓や腎臓を守ってくれることがわかってきました。

現在、日本で使用できるGLP-1受容体作動薬は、

1日2回注射のバイエッタ、1日1回注射のビクトーザ、リキスミア、さらに週1回注射のトルリシティ、ビデュリオンがあります。

(月1回注射タイプや経口薬の臨床試験も進められていますね)

血糖を下げるパターンや体重減少効果の強さは、少しずつ異なるので、患者さんによって使い分けられています。

さて、

新しいGLP-1受容体作動薬であるオゼンピック(セマグルチド注射薬)が、日本で使用できるようになりました!

このオゼンピック、今までのGLP-1受容体作動薬を上回る効果が期待されています。

SUSTAINシリーズのご紹介

SUSTAIN (Semaglutide Unabated Sustainability in Treatment of Type 2 Diabetes)

という、第3相臨床試験(ランダム化比較試験)のシリーズものがあるのですが、

このシリーズが結構壮大です(笑)

SUSTAIN1~10、SUSTAIN-CHINA MRCT、SUSTAIN(日本人version)の12論文が、すでにpublishされていますし、

さらに、超速効型インスリンとの比較試験であるSUSTAIN 11、用量比較試験であるSUSTAIN FORTE、SUSTAIN-SWITCHなども今からpublishされるようで….

 
Gajigaji Dog
サステインシリーズ、どこまで続くんですか?
 
Gajigaji Dr.
‥‥

「SUSTAIN 6」を除くシリーズ1~10を一言で説明してしまうと、こんな感じでしょうか。

成人2型糖尿病患者さんに、既存の糖尿病薬(やプラセボ)、もしくはオゼンピックを投与して、2群間で、HbA1c低下量や体重減少量などを比較しました。

結果は…

 
gajigaji Dog
すべてオゼンピックが勝ちました!

というシリーズです。(我ながら説明があまりにも乱暴すぎるので、詳細は論文をぜひ読んでくださいね💦)

(※もちろん、非肥満の方や、高齢の方などは、あえて体重減少作用が少ない薬剤を選択する場合が多いですので、効果が強ければよいというものではありません。あくまで患者さんに応じて使い分けます。)

副作用に関しては、現行のGLP-1受容体作動薬と比較して、消化器症状などが少し多かった、という報告もありますが、大きくは変わらない、というデータもあります。

SUSTAIN 1~10の総まとめ

SUSTAIN 1 : セマグルチド vs プラセボ(偽薬)→セマグルチドの素晴らしい効果が発揮されました。(セマグルチド1.0㎎群:投与後30週でHbA1c 1.55%低下)

SUSTAIN 2 : セマグルチド vs シタグリプチン(ジャヌビア)→DPP-4阻害薬は文句なく偉大な薬剤ですが、やっぱりセマグルチド、という結果でした。(セマグルチド1.0㎎群:投与後56週でHbA1c 1.6%低下)

SUSTAIN 3 : セマグルチド vs 持効型エキセナチド2.0㎎(ビデュリオン)SUSTAINシリーズはじめてのGLP-1受容体作動薬同士の対決でした!両者とも週1回注射薬。セマに軍配。(セマグルチド1.0㎎群:投与後56週でHbA1c 1.5%低下)

SUSTAIN 4 : セマグルチド vs なんとインスリン!(グラルギン)→グラルギンは10単位から開始して、空腹時血糖値により週1回漸増する試験デザインでした。これは、やっぱり体重に大きな差がつきましたね~(セマグルチド1.0㎎群:投与後30週でHbA1c 1.64%低下)

SUSTAIN 5 : インスリン治療中の患者さんを対象とした、セマグルチド vs プラセボ(偽薬)投与試験です。「インスリン使用患者へのセマグルチド追加投与も高い効果あり!」ということが示されました。(セマグルチド1.0㎎群:投与後30週でHbA1c 1.8%低下)

SUSTAIN 6他のSUSTAINシリーズとはアウトカムが全く異なる試験です。

現在、米国FDAでは新規糖尿病治療薬に対して心血管イベントに関する安全性を評価する臨床試験が義務付けられており、これに基づき行われた試験ですね。3P-MACEで評価された心血管リスクはセマグルチドにより低下し、「セマグルチドは心血管(3P-MACEで評価)への悪い効果はない(むしろプラセボよりもリスクを下げた)」という結果が示されました。

SUSTAIN 7 : セマグルチド vs デュラグルチド0.5㎎/0.75mg (トルリシティ)SUSTAINシリーズ2つ目のGLP-1受容体作動薬同士の対決!セマに軍配。(セマグルチド1.0㎎群:投与後40週でHbA1c 1.8%低下)

SUSTAIN 8 : セマグルチド vs カナグリフロジン(カナグル)→体重減少効果を有するSGLT-2阻害薬との初対決。セマでした。(セマグルチド1.0㎎群:投与後56週でHbA1c 1.5%低下)

SUSTAIN : SGLT-2阻害薬で治療中の患者さんを対象とした、セマグルチド vs プラセボ(偽薬)投与試験です。「SGLT-2阻害薬使用患者へのセマグルチド追加投与も高い効果あり!」ということが示されました。(セマグルチド1.0㎎群:投与後30週でHbA1c 1.5%低下)

SUSTAIN 10はビクトーザ1.2mgとオゼンピック1.0㎎の直接対決、オゼンピックに軍配。

セマグルチドは、我が国で使用できる最大量ですね。

ビクトーザは最大1.8㎎まで使用できますが、1.2㎎もまずまず高用量です。

平均59.5歳、BMI33.7 (96.9kg)、HbA1c8.2% の、経口薬で治療中の2型糖尿病患者さん(ヨーロッパ11か国:90%が白人)に対して投与されました。結構肥満の患者さんですね。

投与開始後30週のHbA1c、空腹時血糖、体重の変化を比較しています。

まず、HbA1cはどれくらい低下したでしょうか?

どちらの薬剤を使用してもHbA1cは下がっていきますが、ビクトーザでは12週後くらいで下がり止まって、そのあとわずかに上昇傾向ですね。

これ、実際の臨床現場でも経験することがよくあります…

オゼンピックは、投与後30週で1.7%も低下していますね!かつ、30週でもまだ低下傾向です。

空腹時血糖の変化については、

やはりオゼンピックでは、30週になっても血糖が下がり続けています。

(ちなみにmmol/Lからmg/dLへの換算は、18をかけてください。FPG(早朝空腹時血糖)10mmol/L=180mg/dLです)

では、体重への効果はどうだったでしょうか?

体重減少効果もかなり強く、長いです。今後、抗肥満薬としても期待が持てる薬剤ですね。

 
Gajigaji Dog
サステインシリーズをざっくりまとめると…
 
Gajigaji Dr
ざっくりまとめないでください。ひとつひとつの研究論文を深く読み込んで…
 
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では、軽くまとめると、
オゼンピック(セマグルチド注射薬)1.0㎎では、投与30~56週で1.5~1.8%ものHbA1c低下を認めたということですね!
サステインシリーズにおける体重変化の詳細と、そのメカニズムについては、以下の記事をご覧ください

ビクトーザとセマグルチドは、GLP-1受容体作動薬という同じ種類の薬剤です。この2者は、ほんの少し構造が異なるのみですが、その小さな違いが、効果の違いを生んでいることに驚かされます。(構造については、上のリンク記事参照)

少なくともこのデータでは、

血糖改善作用、体重減少作用の強さもさることながら、効果が持続する期間が非常に長いですね。

体重減少効果が続くからHbA1cも下がり続けるのか、はたまた他の機序で強い血糖降下作用があるのか、そこもまた興味深いところです。

今までのGLP-1受容体作動薬とは一線を画す薬剤かもしれません。

経口セマグルチドも楽しみですね。

2020年の論文です。Efficacy and Safety of Once-Weekly Semaglutide 1.0mg vs Once-Daily Liraglutide 1.2mg as Add-On to 1-3 Oral Antidiabetic Drugs in Subjects With Type 2 Diabetes (SUSTAIN 10): A 56-Week, Open-Label, Randomized Clinical Trial. Capehorn MS et al. Diabetes Metab.46:100-109, 2020

(各研究の詳細はClinical Trials.govもご参照ください)

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