2型糖尿病は治りますか?
(2020.12.25 大幅に加筆修正しました)
「治る」の定義とはなんでしょうか?
「治る」が「完治」の意味であれば、たしかに糖尿病は未だ「治る」ことのない病気です。
しかし、糖尿病が「寛解」する=「病気による症状や検査異常が消失した状態」になることはあります。 寛解とは、完治はしていない(再発するかもしれない)が、治っているのと同じ状態になる、ということです。ちょっとややこしいですね。
罹病期間の短い、肥満2型糖尿病患者であれば、減量により治る(寛解する)可能性が十分にある。
こんな研究がありました。 「減量すれば、糖尿病が治る(寛解する)か?」という問いに真っ向から向き合った研究です。
イギリスで行われた研究ですが、肥満の2型糖尿病患者さんが減量することにより糖尿病が寛解(remission)するか?ということについて調べられました(DiRECT study)。
対象となった患者さんは、
①20~65歳
➁BMI 27~45
➁2型糖尿病を発症後6年以内
③HbA1c12%未満、インスリン治療中ではない。 を満たした人です。
参加者の平均年齢は52歳、HbA1c7.6%、体重100㎏、BMI 35でした。
参加者(306人)は、強化治療群とコントロール(従来治療)群にランダムに分けられ、強化治療群では3~5ヶ月間の食事療法と定期的な栄養指導が行われ、減量治療が行われました。
結果は…
強化療法群に割り当てられた157人のうち、1年後に多くの人が10kg以上の減量に成功し、強化療法群のうち、46%が寛解に至りました。
(コントロール群では糖尿病が寛解した人は4%でした。)
この研究では、肥満2型糖尿病患者さんのうち、減量治療により約半分の人が、寛解したのですね。すごい!
体重減少量と寛解率の関係を示したのが下図です。
12ヶ月で15㎏以上体重が減った人のうち、なんと86%で糖尿病が寛解していました。 この報告の翌年に、同じ研究で2年間の経過を観察した続報が出ましたが、2年後も参加者の35.6%が寛解を維持していました(下図)。(コントロール群では3%)
体重減少量と寛解率は2年後も強く関連しました(下図)。
糖尿病が寛解した人では、インスリン分泌が回復していた。
さらに、この研究のサブ解析において、寛解した人たちのインスリン分泌を調べると、なんと(アルギニン負荷早期の)インスリン分泌が改善していました(Diabetes Care. 43:813-820,2020)。
糖尿病の発症後、早く治療(介入)すれば寛解やインスリン分泌の回復が期待できる
この研究から見えてくる重要なポイントは2つあります。
①2年間にわたり寛解を維持した人のうち、何人がその後も寛解を維持したかはわかりませんが、肥満者に対する減量治療により2型糖尿病が寛解する可能性は十分にある。
➁発症後、早期に介入すれば、一旦低下していたインスリン分泌の回復が期待できる場合がある。 早期発見、早期介入が重要だということを実感する報告ですね。
(※肥満者を対象とした研究です。非肥満の糖尿病患者さんについては、減量以外の治療法が必要となると思います。)
Time Course of Normalization of Functional β-Cell Capacity in the Diabetes Remission Clinical Trial After Weight Loss in Type 2 Diabetes. Zhyzhneuskaya SV,et al. Diabetes Care. 43:813-820,2020 Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial. Lancet. 391:541-551,2018 Durability of a primary care-led weight-management intervention for remission of type 2 diabetes: 2-year results of the DiRECT open-label, cluster-randomised trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 7:344-355,2019 ※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載はご遠慮ください
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