「血縁者に糖尿病の人がいると、糖尿病にかかりやすい」
「糖尿病の体質は遺伝する」
ということは一般的に知られていますね。
疫学的には、両親が2型糖尿病であれば、子供は50%以上の確率で糖尿病を発症するそうです。(結構高い確率ですね…!)
ですから、親が糖尿病の人では、食事に気をつけていたり、健診などで定期的にチェックを受けている人が多いように思います。
しかし一方で、親が糖尿病でなくても発症する人もいらっしゃいますね。
2型糖尿病のゲノムワイド関連研究(※)に参加した日本人を対象に行われた研究が、とても興味深かったのでご紹介します.
この研究では、糖尿病の家族歴を持つ糖尿病患者さんと、家族歴を持たない患者さんの、糖尿病の特徴の違いが調べられています。
1131人の日本人2型糖尿病患者さんを対象とした横断研究です。
患者さんを、FH+++群(両親ともに糖尿病)、FH++群(片方の親が糖尿病)、FH+群(兄弟が糖尿病)、FH-群(両親、兄弟ともに糖尿病ではない)の4つのグループに分けて、4群間で、糖尿病の特徴を比べました。
平均年齢は、FH+++:62歳、FH++:61歳、FH+:69歳、FH-群:66歳、BMIは各群とも25程度でした。
糖尿病の親もしくは兄弟(特に両親)を持つ患者では、インスリン分泌能が悪く、インスリン治療を行っている割合が高かった。
C-ペプチドというのは、自身のすい臓から分泌されるインスリンの量をあらわしています。
特に、両親が糖尿病の患者さん(FH+++)では、すい臓からのインスリン分泌能がかなり落ちています…
家族に糖尿病がいる患者さんでは、インスリン治療を行っている割合が格段に高くなっています。
糖尿病の家族歴の有無と、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)には関連がなかった。
では、インスリン抵抗性についてはいかがでしょうか?
2型糖尿病は、インスリン分泌の低下(出なくなる)と、インスリン抵抗性の増大(効きにくくなる)の両者により発症するので、抵抗性を調べることも非常に大切です。
HOMA-Rは、インスリン抵抗性が高いほど値が上がります。
インスリン抵抗性は、家族歴がある人とない人では、差がありませんでした。
ゲノムワイド研究においても、インスリン分泌低下と関連するDNA多型(SLC30A8, TCF7L2, KCNQ1, UBE2E2, C2CD4A/Bなど)は結構多いのですが、抵抗性と関連するDNA多型は非常に少ないことが知られています。
少なくともこの研究結果からは、親から受け継ぐ糖尿病の形質(特徴)は、「インスリン分泌低下」のほうが多いようです。
両親もしくは片方の親に糖尿病がいる糖尿病患者の発症年齢は若い。
最後に発症年齢についての結果を見てみましょう。糖尿病の親を持つ人では、持たない人よりも、6歳ほど早く糖尿病を発症しています。
Family history of diabetes in both parents is strongly associated with impaired residual b-cell function in Japanese type 2 diabetes Patients. Iwata M et al.J Diabetes Investig. 11: 564–572,2020
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