COVID-19重症化を予防する糖尿病薬?!

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
今日は糖尿病薬とCOVID-19重症化リスクの関係についての論文をご紹介します。

 

血糖コントロールが悪いとCOVID-19に感染したときに重症化しやすいんだよね。
きちんと糖尿病のお薬を飲みましょうって話?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
そこも大切なポイントですが、今日のお話は少し違うんです。
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
特定の糖尿病薬を使用している患者さんでは、コロナウィルス感染症にかかったときに重症化しにくいかも!という報告です。

 

えっ、本当に?
なんの薬?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
では見ていきましょう。
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
さて、研究のデザインは…

 

COVID-19感染前に内服していた糖尿病薬により予後(死亡や重症化)が変わるのか?

アメリカの電子個人データベース(EHR:Electronic Health Record)を用いて行われたコホート観察研究です。

 

2018年1月から2021年2月にCOVID-19に感染した(=PCR検査で陽性となった)18才以上の糖尿病患者さんのうち、PCR陽性となった日から遡って24ヶ月以内にDPP-4阻害薬もしくはGLP-1受容体作動薬/SGLT2阻害薬を使用していた人が対象となりました。

DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を併用していた人と、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬を併用していた人は除外されました。

 

COVID-19に感染する前にDPP-4阻害薬を使用していた人(DPP4i群)とGLP-1受容体作動薬を使用していた人(GLP-1RA群)において、COVID-19による死亡率と重症化率が比較されました。

さらに、DPP-4阻害薬を使用していた人(DPP4i群)と、SGLT2阻害薬を使用していた人(SGLT2i群)においても同様の比較が行われました。

DPP4i vs GLP-1RAと、DPP4i vs SGLT2iだね。
Mossan
Mossan

 

じゃあ、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬を併用していた人はどこの群に入ったの??
Mossan
Mossan

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
おっ!ついてきていますね!

併用していた人は、DPP4i群とSGLT2i群の両方に入りました。

 

背景因子の調整は傾向スコア解析により行われた。

しかし、このような観察研究では比較する2群間の背景がバラバラかもしれません

例えば、高齢患者さんではCOVID-19に感染すると重症化しやすいことがわかっていますが、GLP-1RA群のなかに若い人が多くGLP-1RA群のなかに高齢者が多ければ、GLP-1RA群で重症化する人は少ない結果となり、薬剤の効果と間違えて解釈してしまう可能性があります。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
このため、この研究ではプロペンシティスコア(傾向スコア)を用いた解析が行われました。
…プロパン?
Mossan
Mossan
まる
まる
シテイス
コアか…
Mossan
Mossan

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
なぜ分けたのですか?
困難は分割したほうがよいかと…
Mossan
Mossan

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
…。
ごく簡単にいうと、傾向スコア解析とは、このような観察研究の場合に各群の背景の違いが結果に影響を及ぼさないように患者背景を揃える手法です。
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
傾向スコア解析というと、傾向スコアマッチング(プロペンシティスコアマッチング)が有名かもしれませんが、この論文ではIPTW法(逆確率重み付け推定法)と二重頑健推定法というセミパラメトリックな手法が使用されています。

 

セミとパラリンピックか…。

ウトウト…、グー

Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
目を開けたまま寝ないでください。

60日以内の死亡率はDPP4i群と比較して、GLP-1RA群、SGLT2i群で有意に低かった。

さて、主要評価項目はPCR検査陽性後60日以内の死亡副次評価項目は観察期間の死亡/救急受診(14日以内)/入院(14日以内)/人工呼吸器装着(14日以内)とされました。

まず、データベースのうち上記の基準を満たしたのは12446人で平均年齢58.6歳でした。

このうち3.1%(12446人のうち387人)が60日以内に死亡しましたが、

各群ごとに見てみると、

GLP-1RA群では2.06%(6692人のうち138人)、SGLT2i群では2.32%(3665人のうち85人)、DPP4群では5.67%(3511人のうち199人)が60日以内に死亡しました。

GLP-1受容体作動薬か、SGLT2阻害薬を使っている人では死亡率が低いの!?(目が覚めた)
Mossan
Mossan

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
その可能性がありますよね。
そこで、傾向スコア解析 で各群の背景を調整して比較が行われました!

 

主要評価項目(60日以内の死亡)について、GLP-1RA群のオッズ比(vs DPP4群)は、なんとTMLE法で0.54(0.37-0.80)、IPTW法で0.54(0.42-0.70)でした。

※TMLE(targeted maximum likelihood estimation):二重頑健推定法、およびIPTW(Inverse probability treatment weighted):逆確率重み付け法はどちらも傾向スコア解析の手法です。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
オッズ比とは、ある事象(今回は60日以内の死亡)の起こりやすさのことです。1より小さいと起こりにくい、1より大きいと起こりやすいと考えらえますね。

 

ということは、GLP-1受容体作動薬を使っていた人では死亡率が半分くらいだったってこと!?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
そうなりますね!

 

SGLT2i群とDPP4群の比較では、

主要評価項目(60日以内の死亡)について、SGLT2i群のオッズ比(vs DPP4群)は、TMLE法で0.66(0.50-0.86)、IPTW法で0.56(0.42-0.73)と、これまた極めて低い結果でした。

でも…どうして?
Mossan
Mossan

 

調整できていない背景因子や観察研究における弱点もある。

GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬の使用者で、COVID-19による死亡率が低下した要因はわかりませんが、ひとつには抗炎症作用(サイトカインストームを抑える)などが考えられているようです。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
ただし、本当にこれらの薬剤がCOVID-19の重症化予防に働くかどうかは、現時点でははっきりしたことは言えません。

この研究では、各患者さんの経済状況(例えば日本と保険制度が異なる米国では、GLP-1受容体作動薬を使用している人は高所得者が多い)や、治療を受けた医療機関COVID-19感染症の治療中の血糖コントロール状況などについては情報が収集できなかったため調整がされていないことや、

糖尿病薬の開始時期や使用期間についても調べられていませんし、

傾向スコア解析を用いて調整はされているもののDPP4i群では高年齢の人や腎障害などがある人が多く含まれていたので、

現段階では、ひとつの研究結果として受け止めておくくらいのほうがよさそうです。(期待してしまいますが!)

 

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
ランダム化比較研究もすすめられているようですので結果が楽しみですね!

 

Association Between Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonist and Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitor Use and COVID-19 Outcomes.Kahkoska AR, e t al. Diabetes Care. 2021

この記事はダイジェスト版です。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ガジガジMeeting(GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬がCOVID-19の重症化を予防する?!)をご覧ください。(無料会員登録が必要です)

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