最近見かけなかったけど、論文も読まず遊びにでも行ってたの?(しかも緊急事態宣言中に)
ガジガジmeetingのほうで忙しかったんですよ!
そんなのもう知ってるよ。
では、空腹時血糖が30mg/dL低下したら、HbA1cは何%下がるのか私に教えていただけますか?
平均血糖値が30mg/dL上昇すれば、HbA1cが1%上がる。
血糖値とHbA1cの関係といえば、昔、この対応表(下図)を覚えようと頑張った遠い記憶があります…。
だいたい平均血糖値が30mg/dL上がると、HbA1cが1%上がるイメージですね。(したがって、どこか1列を覚えてその前後は30刻みと覚えるのがポイントです)
ただしリブレやCGMなどの血糖モニターをつけている方でなければ、自分の平均血糖値がどれくらいかわからないしイメージしにくいですよね。
まだイメージしやすいのは、空腹時血糖値(=朝食前血糖)や食後血糖値ではないでしょうか。
受診時の血液検査や血糖自己測定などでは、それらのポイントで測定することが多いと思います。
では、空腹時血糖値や食後血糖値がどれくらい下がればHbA1cが1%下がるのでしょうか?
インスリン治療(頻回注射法もしくはbasal-bolus療法)と1日7回の血糖自己測定を行っている1572人の2型糖尿病患者さんのデータより、この疑問について調べられた論文がありましたのでご紹介します。
対象者における試験開始時の平均HbA1cは8.6%でした。
患者さんには、毎食前と食後2時間、眠前かAM3時のタイミングで1日7回の血糖自己測定を行ってもらい、血糖値とHbA1cの変化より、これらの関係が調べられました。
(空腹時血糖は朝食前の血糖値、食後血糖値は、朝昼夕の食後血糖の平均値と定義されました)
空腹時(食後)血糖が18mg/dL下がると、HbA1cが0.25%(0.16%)低下する。
空腹時血糖が18mg/dL下がるとHbA1cが0.25%低下、
食後血糖が18mg/dL下がるとHbA1cが0.16%低下するという結果でした。
空腹時血糖がそのままで、食後血糖が250→200mg/dLまで低下すればHbA1cが0.5%低下する。
食後血糖がそのままで、空腹時血糖が180→150mg/dLまで低下すればHbA1cが0.5%低下する。
(実際には、どちらかのみが下がる/上がるということは少ないですが)
空腹時血糖が180→150mg/dLまで低下し、かつ食後血糖が250→200mg/dLまで低下したらHbA1cが1%低下する。
といった感じです。
※ただし、HbA1c7.5%以下の患者さんでは食後の高血糖が、7.5%以上では空腹時血糖が、HbA1cの変化に強く関連することがわかっていますので、もともとのHbA1cのレベルにより、この式は変わってくると考えられます。
最近は、血糖コントロールの指標としてHbA1cだけでなく、血糖値が良好な範囲に入っている時間もしくは測定回数(TIR:Time in range)が注目されています。
1日のうちで、血糖良好(血糖値70~180mg/dL)な時間の割合が長く(70%以上を目標)、低血糖時間が少なくなるよう(5%以下を目標)コントロールしましょうという考え方です。
HbA1cだけでなく、これらの指標を組み合わせて血糖管理を行う時代になりつつありますが、やはりHbA1cは大変わかりやすく有用な指標ですね。
Fasting and postprandial plasma glucose contribution to glycated haemoglobin and time in range in people with type 2 diabetes on basal and bolus insulin therapy: Results from a pooled analysis of insulin lispro clinical trials. Diabetes Obes Metab. 2021;23:1571–1579.