まさか先生、知らないの?
グルカゴンは血糖を上げるんですよ。
グルカゴンには、血糖上昇作用のみならず食欲抑制やエネルギー消費を上げる働きがある
グルカゴンが血糖上昇作用を有することや、糖尿病患者さんではグルカゴン分泌異常がみられることなどにより、糖尿病の病態においてグルカゴンは「悪」と考えられてきました。
しかし、ごく最近になり、グルカゴンは糖代謝だけでなくアミノ酸代謝に重要な働きを持つことや、他にも体の恒常性を保つために様々な働きをしていることが少しずつわかってきています。
グルカゴンは、エネルギー産生作用を有しておりエネルギー消費を上げる方向に作用し、蠕動運動の低下や、中枢神経を介して食欲を抑制する作用もあるのです。
GLP-1とグルカゴンのよい作用を組み合わせたい!と開発されたのが今回の薬剤です。
GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬(SAR425899)は強力な血糖低下作用を有する。
多施設ランダム化プラセボ比較試験(フェーズ2b)です。
過体重/肥満の2型糖尿病患者さん70人に対して、プラセボ、SAR425899(GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬、リラグルチド1.8㎎のいずれかを26週間投与して、投与前後に混合食負荷試験を行い、血糖やインスリン分泌能/感受性の変化について比較しました。
下図は、薬剤を投与する前と26週間投与した後に混合食負荷試験を行い、血糖値とインスリン値の変化をみたものです。
(混合食負荷試験:被検者に600kcaLのテストミールを食べてもらって0~240分までのデータを測定)
HbA1cと体重については、リラグルチド群、SAR群で同程度に低下していました。
SARではグルコース吸収の遅延とインスリン感受性の改善が見られた.結果としてβ細胞機能(DI)が改善.
※DIは、インスリン分泌能と感受性の積であらわされます。
グルカゴンは奥が深いですね。たしかに、単なる「血糖を上げるホルモン」ではないようです。
ただし、この新しい薬剤がなぜインスリン感受性を改善させるのか?(肝臓への影響?)、β細胞機能を改善させるのか?、非肥満の患者さんへの効果はないのか?などなど、機序に関してわからないことが山積みです。
今日は皆さんとMossanを森の奥に連れていって一緒に迷ってしまったような…
Schiavon M, Visentin R, Göbel B, Riz M, Cobelli C, Klabunde T, Dalla Man C. Improved postprandial glucose metabolism in type 2 diabetes by the dual glucagon-like peptide-1/glucagon receptor agonist SAR425899 in comparison with liraglutide.Diabetes Obes Metab. 2021, Apr 6. doi: 10.1111/dom.14394. Online ahead of print.
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