血糖を下げるだけの薬ではないSGLT阻害薬
SGLT2阻害薬は尿糖を増やすことによって血糖を下げる薬ですね。
1日200~400 kcal程度のグルコースが尿として出ていくので、食べる量を増やさずに頑張ることができれば、減量できる患者さんも多いです。
さらに、糖尿病患者さんの心臓や腎臓を守る作用がわかってきており、かなり注目されている薬剤です。
当院でも多くの患者さんがこの薬剤を使用していますが、
血糖が下がるだけでなく、肥満の人が減量できたり、脂肪肝が改善して肝臓の数値が驚くほど低下したり、アルブミン尿が減ったり…
その効果に驚くことが、しばしばあります。(あまり効果がない人も、なかにはいらっしゃいますが)
米国データによると、SGLT2阻害薬を使用している1型糖尿病患者さんにおいて、年間のケトアシドーシス発症率は100人中6~8人にも上っていた。
基本的には、SGLT2阻害薬は2型糖尿病さんに使用される薬剤です。しかし、
日本では、一部のSGLT2阻害薬は1型糖尿病患者さんにも使用できます。
たしかに、肥満ぎみの1型糖尿病患者さんに使用(インスリンと併用)すると、かなり血糖が安定する場合があります。
一方で、この薬、
FDAでは、糖尿病ケトアシドーシスのリスクを増加させるため、1型糖尿病患者への使用は承認されていないのです。
従って、米国では1型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬は、off-label use(適応外使用)ということになりますね。
1型糖尿病患者に対して、SGLT2阻害薬を投与して、その安全性を確認した臨床試験がすでにいくつも発表されています。
これらの研究では、薬を使うことにより、糖尿病ケトアシドーシスのリスクが3~6倍まで上がることが報告されているのですが、
ホントのところ、実際の臨床現場で、適応外でもどのくらいの患者さんに使用されているの?糖尿病ケトアシドーシスは本当に起こっているの?
という疑問に答えるべく行われた研究を、今日は紹介します。
米国データによると、SGLT2阻害薬を使用している1型糖尿病患者さんにおいて、年間のケトアシドーシス発症率は100人中6~8人にも上っていた。
FDAのSentinel systemの医療情報データベースを用いて行われた研究です。
2013年から2018年の間に、SGLT2阻害薬が開始となった患者さん47万人のうち、1型糖尿病の患者さんは4000人でした。やはり、かなり少ないですね。
この1型糖尿病患者さんにおける糖尿病ケトアシドーシス発症率を調べると、
1年間で、100人のうち6~8人が発症していました。かなり多い印象です。
糖尿病学会でも、SGLT2阻害薬の使用において注意喚起がなされています。
1型糖尿病治療の選択肢が増えるのは良いことですが、逆にケトアシドーシスで大変なことにならないように、薬剤の特徴について十分に知ったうえで、使用を検討すべき薬剤ですね。
Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors in Patients With Type 1 Diabetes and Rates of Diabetic Ketoacidosis. Hampp C,et al. Diabetes Care 43:90-97,2020
さて、今日のMossanは、、、
リードに前足をかけるのは、「散歩、もういいです」のポーズです。