インスリン注射にはない、インスリンポンプの強み7つ

①患者さんに合った基礎インスリンパターンにすることができる。

基礎インスリンは、1日中同じペースで分泌されているわけではない、と以前の記事でお話しましたが、これが、一つ目のポイントになります。

インスリン注射では、1日に1回注射する持続型インスリンは、フラットな効果を発揮するので、それぞれの患者さんの特徴に合った基礎インスリンパターンを再現することは難しいのです。

一方、インスリンポンプでは、短い作用時間のインスリンを使用するので、時間毎にインスリン注入量を変えることで、その人に合ったパターンに限りなく近づけることができます。

日本人における時間ごとの基礎インスリン必要量
(J Diabetes Invest 5: 48–50, 2014)

➁ちょこちょこインスリンが打てる→血糖がよくなる。

血糖コントロールの極意は色々あるのですが、コントロールが良い人に共通していることのひとつは、インスリンをこまめに打っていることです。

カーボカウントを行って正しく炭水化物の見積もりを行い、活動量、月経周期、体調などを考慮して、細かくインスリンを調整しても、予想外に血糖が上がってしまうことや下がってしまうことは、誰にでも、比較的頻繁に起こることです。

そして、上がってしまった血糖に対しては補正インスリンを投与しないと下がりません。

この時に補正する(インスリンを投与する)ことは、血糖を良好に保つうえで非常に重要なことです。

この点では、ポンプは有利です。

いちいち肌を出して、注射と針を用意して打たなければならないペン型インスリンと違い、ポンプはボタンを押すだけで注入できます。外出先や人前でもインスリンが投与しやすいですね。

③SAP療法の場合は、低血糖や高血糖時、急激に血糖が変化しているときに教えてくれる。

ポンプに連動する持続血糖モニターを装着すれば、低血糖になる前に、インスリン注入が自動的に中断される機能が使用できます(図の赤線の部分)。

また、高血糖時や、血糖が急激に上がった時にも知らせてくれるので、早めの対処が可能です。(でも、この時にインスリン注入量を増やしてくれる機能は、現行の640Gには、まだないのです…)

④残存インスリンを計算してくれる→インスリンの入りすぎを気にせず、まめにボーラスできる。

食事の時にボーラスインスリンを打ったけど、血糖が思ったより上がってしまって、補正インスリンを打ちたい!

でも、前に打ったインスリンの作用と重なって、補正インスリンを打ったらさかりすぎちゃうかも、、と心配になることはありませんか?

こんな時にも、まだ作用せず体内に残っているインスリンの単位(残存インスリン)を機械が予測して、その分を差し引いて補正インスリンを注入することができます。

⑤インスリン注入量が細かく調整できる。

ポンプでは0.025単位(パッチ式ポンプは0.05単位)刻みで調整が可能です。

インスリン注射は最少0.5単位刻みでしか調整できません。

細かく調整できることは、よりよい血糖コントロールにつながります。

ポンプにしかない便利な機能が使用できる

これは、ポンプの大きなメリットです。→これは別の記事で詳しく解説しますね。

⑦妊娠中、妊娠を考えている女性には良い適応

妊娠中は、経過に伴いインスリン必要量が急激に変化します。また、胎児の正常な発育のために、通常よりも厳格な血糖管理が求められます。

糖尿病合併妊婦さんでは1日6回程度の分割食が必要になりますので、最低でも1日6回、補正インスリンも合わせると10回以上のインスリン注射が必要になることが多いです。

このような状況では、インスリンポンプによる血糖管理が望ましい場合が多いです。

もちろん、妊娠中もインスリン頻回注射で良好に血糖管理される患者さんも、多くいらっしゃいますので、「妊娠中は必ずポンプ療法!」ということはありません。ただし、一度はポンプ療法について考えておくべきだと思います。

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