テルモ社のMEDISAFE WITHと640Gの共通点、異なる点は?
昨年からパッチ式ポンプ(MEDISAFE WITH :テルモ社)が使用できるようになっていますね。
今までは、国内で「インスリンポンプ」といえば、メドトロニック社のミニメドシリーズ一択でしたが、まだ2種類ではあるものの、患者さんに合ったポンプを選択できるようになったのは、大きな進歩だと思います。
ミニメド640GとMEDISAFE WITHを比べると、各ポンプにおける長所、短所が少しずつ見えてきます。
その違いについて見ていきましょう。
MEDISAFE WITH(メディセーフウィズ)の長所3つ~チューブフリー、リモコンで操作~
①メディセーフウィズの最大の強みはチューブフリー
チューブが引っかかることがないので、装着中のストレスが少ないポンプです。服の中に納まります。
640Gを見てみましょう(下図)。
この写真だと、チューブ(黄矢印)を服の下にしまい込んでいるためあまり目立ちません。
しかし、インスリン注入などを行う際には、ポンプ本体を手に持った状態で、画面の操作を行うことになりますので、服の下に隠れているチューブが引っ張られて出てきます。このチューブがないのは、気持ちの面でもすっきりしますね。
メディセーフウィズを実際に装着すると下図のような感じです。残念ながら、すごくコンパクトではないですが、装着部位を工夫すれば、比較的タイトな服でもいけそうです。
女性の手です
ちなみに副院長のおなかです。臍に近いのでもう少しサイドに装着する方がよいですね…
➁メディセーフウィズでは、インスリンの設定や注入は、リモコン操作ですべて完結
リモコンの画面は、下図(左)です。
右は「基礎レート」「ボーラス」を押したときの画面です。わかりやすそうな画面ですね。
bluetooth接続であり、ポンプ本体とは1.5m以内であれば通信できます。
ミニメドシリーズにもリモコンのようなもの(下図:コントアネクスト)があるのですが、コントアネクストで可能なインスリン注入は、マニュアルボーラスとプリセットボーラス(あらかじめ決まった単位)のみで、ウィザード機能を使う場合は、本体機器での操作が必要になります。
コントアネクスト:血糖測定器としても使えます。測定結果をポンプ本体に転送してくれます。
③ポンプ装着手技が簡単
ポンプ装着・交換手技の習得がポンプ導入時のひとつのハードルになります。
装着方法に関しては、ミニメドよりもメディセーフウィズの方が、ややシンプルな印象です。
装着を失敗しないこと(皮下にうまくカニューレが入ること)が、ポンプトラブルを避けるために重要なポイントの一つになりますが、メディセーフウィズについては、装着手技が比較的単純ですので、装着時の不安(「今、うまく入ったかな…💦」)が少ないかもしれません。
ただし、どちらのポンプにしても何度か行ううちに皆さん習得されますので、特に心配はいりません!
このようなメリットをお話しすると、
「メディセーフウィズの方がよい!」と思われるかもしれませんが、ミニメドシリーズにしかないメリットも多くあります。
ミニメドの長所4つ~何といってもSAP療法によるスマートガード機能~
①SAP療法によるスマートガード機能が使用できる
これに尽きます。患者さんを守るために非常に有用なシステムです。
SAP療法、すなわちCGMと連結することにより、ポンプ本体の画面でグルコース値をいつでも確認できます。さらに、高血糖時や、血糖が急激に上昇/下降した時、低血糖時などに知らせてくれます。
何よりも素晴らしい機能は、スマートガード機能ですね。
このままいけば低血糖になりそう!な時に、インスリン注入を中断してくれます。もちろんすべての低血糖を回避することはできませんが、実際の使用経験からも、かなり頼りになる機能です。
メディセーフウィズに連結可能なCGMはないので、CGMを併用することは可能ですが、CGMとポンプは連結しません。従って、スマートガード機能はもちろんありません。
現時点ではミニメド640Gにしか搭載されていない機能です。
※さらに、2022年には使えるようになるミニメド770Gは、さらに自動化が進んだポンプになります!
➁細小0.025単位刻みでインスリン投与量を調整可能
特にインスリン必要量が少ない患者さんにとっては、基礎インスリンの0.025単位の差が結構大きく影響します。ミニメドシリーズは0.025単位での調整が可能ですが、メディセーフは最小0.05単位です。
③食事前のボーラスインスリン時に、残存インスリン(アクティブインスリン)分が減量されない。
残存インスリンとは、少し前に投与したインスリンのうち、まだ作用せず体内に残っているインスリンのことを言います。
メディセーフウィズでは、ミニメドシリーズでは、食事時にボーラスウィザードにより算出された追加インスリン量は、残存インスリンがあろうがなかろうが影響を受けません。
一方、メディセーフウィズでは、算出されたボーラスインスリン量から残存インスリンが差し引かれます。
摂取した糖質に対するインスリンは、その前になんらかの理由でインスリンが投与され、その効果が残っていたとしても、それとは関係なく必要なインスリン量だと考えるべきのような気がしますので、ミニメドシリーズのメリットに入れました。
ただし、どちらがよいかは一概には言えませんね。
④リザーバー容量が大きめ
リザーバーとは、インスリンを入れるタンクのことです。
メディセーフウィズは、最大2mL(200単位)です。
ミニメドシリーズは最大3mL(300単位)です。
インスリンを充てんする際に、多少インスリンを使用しますし、インスリンをすべて使い切ってから交換するわけではないので、実際に使用できるインスリンはリザーバーに入れた量より少ない量になります。
そのように考えると、インスリン使用量が多めの患者さんでは、容量が少なめだと3日間もつか不安ですね。
その他、ボーラスウィザード機能や、追加インスリン投与モード(ミニメドでは通常、急速、スクエア、デュアルの名称)、基礎インスリンパターン、一時基礎レートなどの機能は、どちらのポンプでも使用可能です。
低血糖リスクをなるべく減らしたい(SAP療法)、細かくインスリンを設定したい方にはミニメド、装着ストレスを減らしたい、シンプルに使用したい方にはメディセーフウィズ
低血糖時の症状が出にくい患者さん、夜間の低血糖がしばしばある方では、低血糖昏睡の回避のためミニメド640GのSAP療法がおすすめ、
細かい設定変更ができるのもミニメドシリーズです。
一方、ポンプの装着ストレスを少しでも減らしたい方、なるべくシンプルな操作で使用したい方には、メディセーフウィズがおすすめです。
医療費負担額はどちらのポンプも同じです(CGM併用時は、別途医療費がかかります)