インスリン療法により糖毒性が解除される血糖閾値は167mg/dL?

ガジガジDr.
ガジガジDr.
毎日寒いですね~
うん。走ると風があたるからあまり動かないようにしているんだ。
モッさん
モッさん
モッさん、気が合うね~ ボクもだよ!
まる
まる
ガジガジDr.
ガジガジDr.
…。
ガジガジDr.
ガジガジDr.
(さて、気を取り直して…)

今日は糖毒性(glucotoxicity)に関する論文を見つけました!

糖毒性ってなに?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
これは慢性的な高血糖状態がβ細胞に悪影響を与えてインスリン分泌能をさらに低下させる現象のことですね。

糖毒性って見えるの?どうしたらわかるの?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうなんですよね… そこが難しいところです。

糖毒性とは高血糖によるβ細胞の機能低下であり適切な治療により回復する可能性がある

慢性的な高血糖により血糖管理がさらに困難になる「糖毒性」の概念は比較的イメージしやすいですね。

例えば高血糖が続いている患者さんの治療を行っていてもしばらく血糖値が下がらない状態が続いたのち、ある時を境に急激に血糖値が下がり始めることを経験します。

この時に「ああ糖毒性が解除されたな」と感じます。

しかし個々の患者さんの治療効果には差がありますので、治療への反応が悪い場合にそれが糖毒性によるものか知ることは困難です。

ガジガジDr.
ガジガジDr.
今日は「糖毒性が解除されβ細胞の機能が回復する血糖値の閾値があるのか?」をテーマとして行われた研究をご紹介します!

エーアイDr.
エーアイDr.
補足しますね♪この研究のポイントは3つです!

1️⃣ 空腹時血糖値に「糖毒性が解除される閾値」があるのか?
2️⃣ その閾値を超えるとインスリン治療においてβ細胞機能の回復が加速するのか?
3️⃣ その閾値を超えると血糖値の改善も加速するのか?

あっ!エーアイ君!
モッさん
モッさん

短期集中インスリン療法によるβ細胞機能回復、糖毒性解除のタイミングを検証した試験

これは2023年にカナダで行われた短期集中インスリン療法(IIT:intensive insulin therapy)のβ細胞機能に対する効果を調べたランダム化比較研究の二次解析です。

発症後5年以内の2型糖尿病患者さん108名を対象として空腹時血糖72~108mg/dL、食後2時間血糖 <144mg/dLを目標とした3週間のIITを行いました。

IITの前後で経口血糖負荷試験(OGTT)を行い血糖値およびβ細胞機能の指標を評価しました。

<結果1>β細胞機能指標(ISSI-2)の改善はベースラインの空腹時血糖167mg/dLを境に加速した

ガジガジDr.
ガジガジDr.
結果です♪

ガジガジDr.
ガジガジDr.
下図がベースライン(IIT前)の空腹時血糖IIT前後のISSI-2の増加率との関係を示したものです。

ええと…ISSI2ってなんだっけ?(眠くなってきた)

モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
ISSI-2(Insulin Secretion-Sensitivity Index-2)はOGTTから算出される膵β細胞機能の指標ですね。

急にISSI-2が上がっているところがあるね。空腹時血糖値が167mg/dLのところ?
まる
まる

ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですね!この血糖値を境にβ細胞機能(ISSI-2)が急激に回復するということですね!。

ISSI-2 の改善率は、治療前の空腹時血糖が167mg/dL未満であった群では35%であったのに対し、167mg/dL以上の群では96%と約3倍の改善率を認めました。

 

<結果2>治療前後の血糖値の改善もベースラインの空腹時血糖167mg/dLを境に加速した

ではベースライン(IIT前)の空腹時血糖OGTTによる負荷前血糖値、負荷後2時間血糖値のITT前後の変化量との関係を示した図を見てみましょう。

 

 

負荷前血糖値、負荷後2時間血糖値も治療前の空腹時血糖値167mg/dLを境にIITによる血糖改善効果が加速しました。

 

ええと…IITってなんだっけ?(さらに眠くなってきた)
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
今更そんなこと聞かないでください!

エーアイDr.
エーアイDr.
「モッさん」さん、この研究におけるITTは短期集中インスリン療法のことですネ。

結論:糖毒性が解除されるボーダーラインの血糖値は?

ガジガジDr.
ガジガジDr.
これらの結果より糖毒性が解除されるボーダーラインの血糖値は、空腹時血糖167mg/dLではないかと結論付けられました。

おもしろいね!
まる
まる

エーアイDr.
エーアイDr.
この知見は各々の患者さんの治療戦略や治療効果判定に役立ちそうですネ。

このデータが示唆することについて、以下のような考察がされていました。

① 糖尿病治療ストラテジーに活用できる可能性

空腹時血糖167mg/dL以上の患者は短期集中インスリン療法(IIT)を積極的に検討すべきかもしれない

✲早期に糖毒性を解除すれば、β細胞の機能回復が期待できる可能性

②臨床試験での治療効果評価に有用

治療前の空腹時血糖167mg/dL以上の患者は「治療反応が大きくなるグループ」と考えられる

治療の個人差を説明する一つの要因になるかもしれない

 

エーアイDr.
エーアイDr.
あ~ 今日も素晴らしい論文に出会いましたね!(ガジガジDr風♪)
えっ、エーアイ君ってもうレギュラーメンバー?

僕の出番が減るじゃないか!(いや、減るのは先生か?)

モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
毎日寒いですが風邪ひかないように気をつけましょうね!

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A Glycemic Threshold Above Which the Improvement of β-Cell Function and Glycemia in Response to Insulin Therapy Is Amplified in Early Type 2 Diabetes: The Reversal of Glucotoxicity. Retnakaran R, Pu J, Ye C, Emery A, Harris SB, Reichert SM, Gerstein HC, McInnes N, Kramer CK, Zinman B.Diabetes Care. 2024 Nov 1;47(11):2017-2023.

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