幼少期の糖尿病発症、血糖コントロールと脳発達との関係について
幼小児期発症の1型糖尿病患児の脳発達について詳細に調べられた研究です。
1型糖尿病患児144人と年齢をマッチさせた糖尿病のない幼児・小児72人を対象として行われました。
試験開始時に、少なくとも1か月以上のインスリン治療を行っている4~7歳の1型糖尿病患者がリクルートされました。
てんかん、糖尿病以外の慢性疾患、精神疾患を持つ児、発達遅滞児、早産児は対象から除外されました。
平均発症年齢は4歳くらいでした。
対象者は、初回と、その後18か月毎にMRI検査と知能検査(WISC)が計4回行われました。
MRIでは、全脳、白質、灰白質容積が計測されました。
知能検査では、全検査IQ(FSIQ)、言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)が調べられました。
また、年に4回HbA1cとCGM(持続血糖モニター)の検査が行われました。
1型糖尿病患児では、発症早期に軽度のIQ低下、脳容積低下がみられる。
下図は、1型糖尿病患児(赤字)と、非糖尿病児(青字)の、各年齢における脳容積とIQのグラフです。
ただし、脳容積はほぼ差がない印象です。
どのグラフにおいても、年齢とともに差が開いていくのではなく、最初(6才時)に見られた差が続いているような印象です。
1型糖尿病患児では、高血糖(>180mg/dL)時間が長い、血糖のばらつき(SD)が大きいほど、IQが低下した。
また、この研究では、糖尿病のコントロール指標と、脳容積およびIQの関連について調べられています。
このうち、糖尿病コントロール指標とIQとの関連についての結果のみご紹介します。
下の図は、全検査IQ(FSIQ)と「HbA1c>6%のAUC」、CGMにおける「センサグルコース値>180mg/dLであった割合(%)」「センサグルコース値のばらつき(SD)」との相関を調べています。
これらの結果より、幼少期に発症した1型糖尿病患児では、
特に若い年齢で脳発達に影響を受ける可能性があること、
幼小児期の高血糖時間の長さや血糖値のばらつきが脳発達に悪影響を与える可能性があることが推測されました。
しかし、幼小児期発症も含めて多くの1型糖尿病の患者さんを日々診療していて感じるのは、むしろ優秀かつ思慮深い人が多いということです。
安全に良好な血糖コントロールが維持できるように私たち医療者も最大限サポートしたいと考えています。
Impact of Type 1 Diabetes in the Developing Brain in Children: A Longitudinal Study. Mauras N,et al. Diabetes Care 44:983–992,2021
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