また日記サボってたでしょ。やる気あんの?
週1回投与が可能な基礎インスリンです!
そうだそうだ!
同じ話を何回も聞かせないでよ!
今日は終わり、帰ろう!
前は、えーと…インスリンアイコデック(icodec)の話だったよね。
今日は違うインスリンの話です。
週1回投与が可能なInsulin Fc(LY3209590)はFc融合タンパク質医薬品
以前に週1回投与が可能なアイコデック(icodec)についての論文を紹介しましたが、今回はインスリンFcについての論文をご紹介します。
インスリンFcはアイコデックと同じく週1回投与が可能なインスリンとして開発され、現在臨床研究が進められています。
インスリンFcも似たような構造なの?
つまり、丸いボールみたいな部分がインスリンなんだよね。それに細長い棒がくっついている…ここがIgG-Fc領域ってこと?
とすると、そのIgGをわざわざくっつけているところがキモなんだね。
このIgG-Fc領域が結合していることで分子量が増加し腎臓で分解されにくくなり、さらに胎児Fc受容体(FcRn)との結合によりインスリンがリサイクリングされることで血中濃度が保たれ半減期が長くなるようです。
通常、インスリンは受容体に結合したのち細胞内のリソソームで分解されるのですが、このインスリンFcのIgG-Fc部分が細胞内で胎児Fc受容体に結合することで分解を免れ、再び細胞膜表面に出てリサイクリングされることにより血中濃度が保たれるようです。
IgGが色々なところに作用してしまわないの?
IgGが抗体依存性、補体依存性の細胞障害を引き起こすことが懸念されますが、IgG-Fc領域の改変によりその問題はクリアされているようです。
(ヌンチャクと夢の中)
インスリンFcとデグルデクのランダム化比較試験(Phase2)では同等のHbA1c低下作用を認め、低血糖頻度はインスリンFcで有意に低かった。
アメリカ、プエルトリコ、メキシコの44施設で行われた多施設共同、非盲検無作為化第Ⅱ相試験です。
BMI20~45、HbA1c6.5~10%の成人2型糖尿病患者さんのうち、
グラルギン、デテミル、デグルデクのいずれかの基礎インスリンを最低10単位/日、かつ1.5単位/体重(kg)以内の用量で使用しており、経口糖尿病薬を併用していない、もしくは3剤まで併用している人が対象となりました。
対象者は人種、BMI、HbA1c、SU薬使用の有無を層別因子として①BIF-A1群(130名) ②BIF-A2群(125名) ③デグルデク群(124名)に1:1:1でランダムに割り付けられ(層別ランダム化)、
BIF群とグラルギン群で、投与32週におけるHbA1cのベースラインからの変化(主要評価項目)、空腹時血糖の変化、血糖変動指標(変動係数:CV)、低血糖頻度などが比較されました。
※デグルデク:トレシーバ
インスリンFc群は2つあるということですね。
さて、BIF群は半減期が長い分立ち上がりも遅いため、初回はローディングドーズ(Loading dose)で投与され、その後は計算された通常量が週1回投与されました。
デグルデク群は1日1回投与されました。
血中濃度を上げるために、最初だけたくさん投与するやつ?
初回投与量、その後の投与量については、HbA1cともともとのインスリン投与量より本研究が定めたルールに従い決定されました。
インスリンFc の1㎎は49単位(1日あたり7単位)くらいの計算になるようです。
液体だよね。
凍結乾燥した粉らしいです。
打てないじゃん!
水か生理食塩水に溶かして注射するみたいですね。
A1群は、空腹時血糖140mg/dL以下を目標、A2群は120mg/dL以下を目標としてインスリンFcが2週間毎に増量されました。
デグルデク群は空腹時血糖100mg/dL以下を目標としてインスリンが1週間毎に増量されました。
比較できないじゃない。
主要評価項目である32週におけるHbA1cのベースラインからの変化は、
BIF-A1群とA2群では-0.6%、デグルデク群では-0.7%であり(有意差なし)、インスリンFcはデグルデクと同等のHbA1c低下作用を認めました。
副次評価項目として血糖変動指標や低血糖頻度も比較されました。
まず、日内および日差血糖変動指標(変動係数:CV)の結果が下図です。
よくわからないけど、灰色のバーの背が高いところが多いような…?
赤で囲んだ時間帯ではインスリンFc(BIF群)がデグルデク群よりも有意にCVが小さいという結果でした。
また、低血糖頻度(回数/人/年)については、インスリンFc群がデグルデク群よりも25%少なかったという結果でした。(今回の研究では目標血糖値が異なるので単純に比較できませんが…)
ちなみに、Fcの半減期はなんと17日前後だそうです。(ちなみにアイコデックは7日くらいです。)
このため、例えばグラルギンの日内(24時間)のトラフピーク比(peak-to-trough ratio)は1.8であるのに対して、デグルデクは1.5、さらにインスリンFcは1.14くらいだと考えられています。インスリンFcは極めてフラットに効くインスリンといえますね。
これが血糖変動や低血糖が少ない要因のひとつになっているのかもしれません。
インスリンFc発の技術なの?
糖尿病薬で言うと…
トルリシティですね。
週1回のインスリン、安全性がきちんと確かめられたうえで早く使用できるようになるとよいですね!
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