でも飲み方が特殊なんだよね。
たしか、朝の空腹時に薬を飲んでから30分は飲食できないんだっけ。
セマグルチド注射薬と同等の効果を発揮するすばらしい薬剤ですが、一部の患者さんにとってはそこがネックになりますね…
今日はもういいわ、僕は帰るわ。
せっかくまとめたんだから聞いてください!
ここ、糖尿病専門犬試験に出ますよ!
各医薬モダリティにより投与経路、副作用、コストが異なる
ひとつは低分子医薬品、二つめは?
では、3つ目は?モッさん。
特大?特盛?
(モリデーだから)
ふざけないでください!特大とか特盛はありません!
医薬品はその分子量により低分子、中分子、高分子医薬品に分かれます。
昔からある医薬品は低分子の化合物が多く、だいたい分子量500前後より小さいものになります。
分子量が小さいので経口投与でき、比較的安価に大量に生成できるメリットを持つ薬品です。また小さな分子であるため細胞内にも届けることができますが、特異性は低い特徴があります。
一方、高分子薬は抗体医薬やワクチンなどの分子量が大きい(10000くらい)薬品のことを指します。バイオ医薬品とも言われますね。
分子量が大きく経口投与できないため注射剤として使用されます。
また分子量の大きさから細胞内に入ることができないので細胞表面タンパク質か、血中に存在する分泌タンパク質が標的分子となります。
特異性は極めて高いので一般に副作用の少ない医薬品とされています。
但し大きな欠点がひとつあります。
バイオテクノロジーを活用して(生産のために生物や細胞を活用)生産されるため大掛かりな施設が必要かつ手間がかかり、生産コストがかなり高くなります。同様に、開発にも莫大なコストがかかります。
中分子医薬品の代表選手はペプチド医薬品です。概ね分子量600から10000程度の薬品です。
ちなみにおおむね100以上つながっているものはタンパク質と呼ばれます。
生体内にあるペプチドそのものや、一部の配列を変えたもの、真似をしたもの(ミメティクス)が薬品として合成されているのです。
GLP-1受容体作動薬であるリラグルチド、セマグルチド、リキシセナチド、エキセナチドなどもペプチド医薬品ですね。
リベルサスはペプチド薬でありながら経口投与が可能な唯一のGLP-1受容体作動薬
中分子医薬品であるペプチド薬は、高分子薬と低分子薬のいいとこどりができる可能性のある薬品です。
化学合成が可能なので比較的安価に生成できますし、選択性も高く副作用を抑えられる可能性があります。
但しペプチドであるが故の欠点もあります。
では開発中のGLP-1受容体作動薬の紹介です!
これはペプチド薬ではないのです。
ダヌグロプリン(danuglipron)、オルフォルグロプリン(orforglipron)は低分子量の非ペプチドGLP-1受容体作動薬である。
日本人2型糖尿病患者さんを対象としたダヌグロプリンのランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(第1相)をご紹介します。
ダヌグリプロン40㎎、80㎎、120㎎もしくはプラセボ(偽薬)を1日2回にわけて8週間内服(朝食後と夕食後)してもらい、安全性と忍容性、代謝パラメータ(血糖値、HbA1c、体重など)が比較されました。
今までのGLP-1受容体作動薬と同じく、嘔気や食欲低下などの消化器症状がダヌグリプロン群で出現しましたがいずれも軽度~中等度であったとのことです。
下図はHbA1cと体重の変化です。
ちなみに、他の低分子非ペプチドGLP-1受容体作動薬も現在開発されています。
低分子の非ペプチド薬であるオルフォルグリプロン(orforglipron:LY3502970)も現在臨床試験が進められており、こちらはなんと1日1回の内服で効果を発揮するようです。
(ちなみに、ダヌグロプリンの分子量は555、オルフォルグロプリンの分子量は883で低分子薬としては少し大きめですが、セマグルチドの分子量は4114ですので比較すると小さいですね・・)
まだ論文化はされていませんが、2022年の欧州糖尿病学会ではオルフォルグロプリンの第1相試験の結果が発表されていました。
(※LYがオルフォルグロプリン、placeboが偽薬)
でも、どうして構造が変わっているのにGLP-1受容体を活性化できるの?
GLP-1受容体との親和性に重要な部分を残して低分子化デザインされたのかもしれません。
但し、ダヌグロプリンはGタンパク質のバイアストリガンドらしく、βアレスチンシグナルはあまり活性化されないらしいのです。
それが 生体のGLP-1や既存の作動薬とは違う形でGPCR コンフォメーション(TM7)に影響して、アゴニスト作用が発揮されたのではないかと?ある論文では書いてありました(Molecular Cell 80, 485–500, 2020)。
でもこれは私がそう考えているだけで、間違っているかもしれませんが…。
ボクもたまにわからないことあるし。
※どちらの薬剤も2型糖尿病、肥満症に対して第3相試験が近いうちに開始されるようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
A phase 1 study to evaluate the safety, tolerability, pharmacokinetics and pharmacodynamics of danuglipron (PF-06882961), an oral small-molecule glucagon-like peptide-1 receptor agonist, in Japanese adults with type 2 diabetes mellitus. Diabetes Obes Metab.2022 Nov 26. doi: 10.1111/dom.14928. Online ahead of print.
Differential GLP-1R Binding and Activation by Peptide and Non-peptide Agonists.Zhang X,et al. Mol Cell. 2020 Nov 5;80(3):485-500.e7