食後の中性脂肪の正常値を知っていますか?
では、食後は?
パサパサのドッグフードとリッチな犬缶では上がり方がきっと違うし、食べる量によっても変わってきそうだし…
でも…
食後の中性脂肪の値は、食事の内容や量、食後の経過時間などによって、かなりバラツキますよね。
食後の中性脂肪が400mg/dLとか、500mg/dLとかまで上がっていると、さすがに良くなさそうな感じはしますが、そもそもどれくらいまで上がるとよくないのでしょうか?
2型糖尿病患者さんにおける、食後の血糖値、および中性脂肪の値と予後(死亡率)との関係を調べた報告がありましたので、ご紹介します。
2型糖尿病患者における食後の中性脂肪・血糖値は全死亡と関係した。
1995~1999年に朝日生命成人病研究所附属病院を受診され、その後1年間以上通院された2型糖尿病患者さん1928人を対象としたコホート研究です。
初回受診時に参加者の食後血糖値と中性脂肪を測定し、その後、平均18.7年間のフォローアップが行われました。(本研究では、空腹時以外を食後と定義されています)
初回受診時の血糖値(BGコホート)、中性脂肪値(TGコホート)と、観察期間中の死亡率との関係が調べられました。
食後の中性脂肪203mg/dL以上のグループで、有意に死亡率が上昇した。(TGコホート)
対象患者さんの平均年齢は61歳、罹病期間は6年、BMI 23、HbA1c7.9でした。
食後の中性脂肪の値により、対象者は同人数ずつ、以下の5つのグループに分けられました。
Q1:81mg/dL未満、Q2:81~108mg/dL、Q3:108~143mg/dL、Q4:143~203mg/dL、Q5:203mg/dL以上
Q1を基準としたQ2~Q5における死亡のリスク(ハザード比)を下に示します。
有意差はないものの、中性脂肪143~203mg/dLの人も、ややリスクが高そうですね…
ちなみに、Q5グループの平均値は299mg/dL、Q4グループの平均値は169mg/dLでした。驚くほど高くはないですよね。
なお、年齢、性別、糖尿病の罹病期間、BMI、収縮期血圧、HbA1c、コレステロール、喫煙、飲酒、心血管疾患の既往、がんの既往で補正されていますので、これらの因子の影響を取り除いて解析されたデータです。
下図は、食後の中性脂肪203mg/dL以上、もしくは未満の患者さんにおける累積死亡率の比較です。初診後、5年程度経過したあたりから、観察期間をとおして、死亡率の上昇がみられました。
HbA1cで補正後も、食後血糖248mg/dL以上のグループで、有意に死亡率が上昇した。(BGコホート)
BGコホートでは、食後血糖値により、対象者は以下の5つのグループに分けられました。
Q1:126mg/dL未満、Q2:126~157mg/dL、Q3:157~193mg/dL、Q4:193~248mg/dL、Q5:248mg/dL以上
Q1を基準としたQ2~Q5における死亡のリスク(ハザード比)は下図です。
これは、「血糖コントロール不良の患者さんの死亡率が高かった」ということだけをあらわしたデータではありません。
BGコホートにおいても、年齢、性別、糖尿病の罹病期間、BMI、収縮期血圧、HbA1c、コレステロール、喫煙、飲酒、心血管疾患の既往、がんの既往で補正されています。
したがって、HbA1cの影響を取り除いても、食後血糖の上昇が死亡率に関係していることが示されているのですね。
下図は、食後血糖248mg/dL以上/未満の患者さんにおける累積死亡率の比較です。初診後、数年経過したあたりから、観察期間をとおして、死亡率の上昇がみられました。
「食後だから」と安心していてはいけないね。
Takao T, et al.Thresholds for postprandial hyperglycemia and hypertriglyceridemia associated with increased mortality risk in type 2 diabetes patients: A real-world longitudinal study.J Diabetes Investig 2020,Sep 12. doi: 10.1111/jdi.13403. Online ahead of print.
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