春の到来とともに私のもとに訪れた素晴らしい論文に!
2型糖尿病の発症前からインスリン分泌能は徐々に低下している
さて、ご存じの通り2型糖尿病の発症にはβ細胞機能(インスリンを分泌する力)が深くかかわっています。
このβ細胞機能が低下すると糖尿病になってしまうわけですが、実は糖尿病の発症前からインスリン分泌は徐々に低下していることがわかっています。
2型糖尿病の発症にはインスリン分泌能だけでなくインスリン感受性(効きやすさ)も関係するでしょうし…
ガジガジDrの言うとおり、β細胞の自然史を詳細に知ることは非常に難しいですが、東アジア人2型糖尿病患者さんのβ細胞機能の経時的変化やβ細胞機能に影響を与える因子などについてまとめられたレビューが非常に勉強になりましたのでご紹介します。
非常に興味深い内容であり多くの報告が引用されていましたが、レビューで紹介されていた論文のなかで、本日はβ細胞機能の自然史について調べられた研究を中心にご紹介します。
糖尿病を発症した患者において、発症前から年2.2%のβ細胞機能低下がみられた(広島の疫学研究より)
広島の原爆被爆者の方々に対して行われた糖尿病の疫学研究です。
1984~2012年の検診時に尿糖陽性であった26868人が登録され、定期的にブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われました。
そのうち、登録時に耐糖能異常がなく観察期間中に①糖尿病を発症した1817人と②OGTTで糖尿病型に移行した1843人(ただしHbA1c<6.5%で糖尿病とは診断されなかった)が対象となりました。
対象者は平均11年間追跡され、観察中に平均6.8回OGTTが行われました。
β細胞機能はHOMA-βという指標により評価されました。
OGTTデータより線形混合モデルを用いて解析が行われ、β細胞機能(インスリン分泌能)の発症前からの経時的変化が示されています(下図)。
モッさん、そう思いませんか!?
太い線が1本ずつあるね。
どちらの傾きが急ですか?
ちなみに、①の人は糖尿病と診断されたため医療機関を受診するよう勧められ、各医療機関で食事、運動療法が開始されました。(薬物治療介入はなし)②の人は糖尿病と診断されていないので健康管理センターで食事、運動についてのアドバイスが一度?行われたようです。
①の人は発症後の傾きが緩やかになっており、治療介入によりβ細胞の低下速度が遅くなっているのかもしれません!
たしかに海外の報告(特に欧米)ではそのような報告も時々見受けられます。
一方で日本人においては、多量でなくても飲酒量に応じてインスリン分泌が低下し糖尿病発症リスクが上がってしまうという報告があります。
糖尿病発症前からのβ細胞機能を長期間観察した非常に貴重な報告ですね。
糖尿病を持つ人ではβ細胞量が3~4割減少している
さらに糖尿病患者さんではβ細胞量が低下していることが知られています。
このレビューではアジア人の報告(剖検膵や切除膵)がまとめられていました。
モッさんはいつか日本酒を飲んでやるという鋭い眼差しでいつも机の上のコップを睨んでいます。
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