2型糖尿病の発症前からβ細胞機能(インスリン分泌能)は徐々に低下している

Trees Ornamental Cherry  - ChiemSeherin / Pixabay
今日、公園に行ったら桜が咲いていたよ!地面にも花びらが落ちていていい匂いだったよ。
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
桜といえば、出会いと別れの季節ですね…
誰かとお別れしたの?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
いえ、出会ってしまったのです!
春の到来とともに私のもとに訪れた素晴らしい論文に!
…。
モッさん
モッさん

 

2型糖尿病の発症前からインスリン分泌能は徐々に低下している

さて、ご存じの通り2型糖尿病の発症にはβ細胞機能(インスリンを分泌する力)が深くかかわっています。

このβ細胞機能が低下すると糖尿病になってしまうわけですが、実は糖尿病の発症前からインスリン分泌は徐々に低下していることがわかっています。

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
つまり、インスリン分泌能は経時的に低下しており、あるラインまで分泌能が低下したタイミングで血糖値が抑えられなくなり2型糖尿病を発症するということですね。
β細胞機能がどれくらい減ったら発症してしまうの?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そこは重要な点ですが明快に説明することは難しいです。
2型糖尿病の発症にはインスリン分泌能だけでなくインスリン感受性(効きやすさ)も関係するでしょうし…
ガジガジDr.
ガジガジDr.
なにより糖尿病を発症した人のβ細胞機能がいつから、どのような速度で低下していたのか調べることは非常に難しいです。

 

ガジガジDrの言うとおり、β細胞の自然史を詳細に知ることは非常に難しいですが、東アジア人2型糖尿病患者さんのβ細胞機能の経時的変化やβ細胞機能に影響を与える因子などについてまとめられたレビューが非常に勉強になりましたのでご紹介します。

ガジガジDr.
ガジガジDr.
インスリン分泌能はかなり人種差がある(日本人は分泌能が低い)ことが知られています。このため欧米のデータをそのまま日本人にあてはめることはできないので、日本人(アジア人)のデータは非常に貴重ですね!

 

非常に興味深い内容であり多くの報告が引用されていましたが、レビューで紹介されていた論文のなかで、本日はβ細胞機能の自然史について調べられた研究を中心にご紹介します

 

糖尿病を発症した患者において、発症前から年2.2%のβ細胞機能低下がみられた(広島の疫学研究より)

広島の原爆被爆者の方々に対して行われた糖尿病の疫学研究です。

1984~2012年の検診時に尿糖陽性であった26868人が登録され、定期的にブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われました。

そのうち、登録時に耐糖能異常がなく観察期間中に①糖尿病を発症した1817人②OGTTで糖尿病型に移行した1843人(ただしHbA1c<6.5%で糖尿病とは診断されなかった)が対象となりました。

対象者は平均11年間追跡され、観察中に平均6.8回OGTTが行われました

ガジガジDr.
ガジガジDr.
非常に多くの方々を長期間フォローアップした貴重な研究ですね!

 

β細胞機能はHOMA-βという指標により評価されました。

OGTTデータより線形混合モデルを用いて解析が行われ、β細胞機能(インスリン分泌能)の発症前からの経時的変化が示されています(下図)。

 

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
このデータはすごいですね!
モッさん、そう思いませんか!?
うん。
太い線が1本ずつあるね。
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
…。
どちらの傾きが急ですか?
左!
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですよね。追跡期間中に糖尿病を発症した人(①)では発症まで年間2.2%、②の人では年間1.2%β細胞機能が低下していたとのことです。
じゃあ①の人は20年で…
モッさん
モッさん
44%!
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
うーん、単純な掛け算でよいかよくわかりませんが20年間でかなり分泌能が落ちて発症したことは確かですね。
②の人たちと比べても糖尿病を発症した人ではこの傾きが大きかったんだね…
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですね。

 

ちなみに、①の人は糖尿病と診断されたため医療機関を受診するよう勧められ、各医療機関で食事、運動療法が開始されました。(薬物治療介入はなし)②の人は糖尿病と診断されていないので健康管理センターで食事、運動についてのアドバイスが一度?行われたようです。

①の人は発症後の傾きが緩やかになっており、治療介入によりβ細胞の低下速度が遅くなっているのかもしれません!

 

ガジガジDr.
ガジガジDr.
さらに、レビューではβ細胞機能を低下させる(=グラフの傾きを大きくさせる)因子として飲酒、脂肪膵、遺伝などが挙げられていました。
そこまで多くない飲酒ならむしろ糖尿病のリスクを下げるっていう海外の報告もなかったっけ?
まる
まる
ガジガジDr.
ガジガジDr.
よく知っていますね!
たしかに海外の報告(特に欧米)ではそのような報告も時々見受けられます。
一方で日本人においては、多量でなくても飲酒量に応じてインスリン分泌が低下し糖尿病発症リスクが上がってしまうという報告があります。
僕、日本酒の甘い香り大好きなんだけどな…
モッさん
モッさん

 

糖尿病発症前からのβ細胞機能を長期間観察した非常に貴重な報告ですね。

 

糖尿病を持つ人ではβ細胞量が3~4割減少している

さらに糖尿病患者さんではβ細胞量が低下していることが知られています。

このレビューではアジア人の報告(剖検膵や切除膵)がまとめられていました。

 

 

糖尿病の人ではβ細胞量が結構減っているね…
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうですね。このβ細胞量の減少もβ細胞機能(インスリン分泌能)の低下に強く関わっているのですね。
ガジガジDr.
ガジガジDr.
今日も本当に勉強になる論文でしたね!

 

 

モッさんお花見行こ~
まる
まる
行こ行こ~ 日本酒とジャーキーとちゅーる持っていこう!
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
だから飲酒はインスリン分泌能を…
あ、先生も行く?行かないか~
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
行く!

 

 

モッさんはいつか日本酒を飲んでやるという鋭い眼差しでいつも机の上のコップを睨んでいます。

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