GLP-1受容体作動薬は糖尿病患者さんの血糖値をすごく下げて、体重も減らして、おまけに血管も守る薬だよね。
では、GIP受容体作動薬についてもよくご存じでしょうか?
うん、まあまあ知ってるよ…
では、もちろんグルカゴン受容体作動薬も知っていますよね。
…まあね。
僕に話しかけないで!
さすがのモッさんも、色々な薬剤が出てきてかなり混乱しているようですが…
今日はGLP-1受容体作動薬、GLP-1/GIP共受容体作動薬、GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬の血糖改善効果と減量効果を比較したすごいシステマティックレビューがありましたのでご紹介します。
(※ちなみに現在、日本で2型糖尿病患者さんに使用できるのはGLP-1受容体作動薬のみです)
GLP-1受容体作動薬は、食事を摂ったときに小腸のL細胞から分泌されるGLP-1を薬理学的濃度まで高めた薬剤で日本でも糖尿病患者さんに対して広く使われていますね。
モッさんのいうとおり、血糖改善効果や食欲抑制効果に加えて腎保護や心血管保護作用が報告されています。
GIPはGLP-1と類似した働きを有するが、その他グルカゴン調節にも関わっている。
GIPもGLP-1と同じく小腸から分泌される消化管ホルモンです。
GIPって少し前までは糖尿病患者さんに対してはプラスに働くのかマイナスに働くのかよくわかっていなかったんだったっけ?
GIPはGLP-1と同じくインスリン分泌促進や食欲抑制作用を有するホルモンですが、一方でグルカゴン分泌の促進作用や脂肪細胞における脂質合成作用などがあるうえに、糖尿病の患者さんではGIPが効きにくい状態(GIP抵抗性)になっているため、GLP-1と比べると糖尿病治療薬のターゲットとしての意義に乏しいと考えられていました。
なお、GIP抵抗性に関しては、高血糖が持続している時には「GIP抵抗性」が確かに認められるようですが、血糖値が低下すればこの抵抗性は比較的速やか(数週間)で解除されることも最近わかってきています。
グルカゴンはインスリン拮抗作用のほかに抗肥満作用を有する
グルカゴンはインスリンの拮抗ホルモンであり、主な作用として肝糖産生などを介した血糖上昇作用を有するのは確かですが、別の顔もあるのです。
さらに、グルカゴンは抗肥満ホルモンでもあります。
グルカゴンは肝臓や脂肪細胞において脂肪分解や熱産生を促してエネルギー消費を上げる方向に作用するホルモンであり、さらに食欲抑制作用も有しています。
(アミノ酸の代謝調節にも深く関わっているホルモンです。)
GLP-1、GIP、グルカゴンは、それぞれ類似する作用と相反する作用を持つ
先生って、けっこう暇犬だね。
それに、
100%見る気しないわ!
もうちょっと工夫して作ってよ。
作り直したのが下図です(Diabetes Obes Metab. 2022;24:788–805を和訳改変)。
緑で囲った部分は各ホルモンの作用が類似していますが、赤の部分は相反していますね。
GLP-1とGIP、GLP-1とグルカゴンを組み合わせた共受容体作動薬の意義
さて、GLP-1受容体作動薬とGIP受容体作動薬を組み合わせた薬剤が「GLP-1/GIP共受容体作動薬」、GLP-1受容体作動薬とグルカゴン受容体作動薬を組み合わせた薬剤が「GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬」ですね。
でも、逆に一方の薬剤の(糖尿病や肥満治療における)デメリットをもう一つの薬剤がうまく補う、という考え方もできるのです。
例えば、GLP-1とグルカゴンは基本的には血糖に対して相反する作用を有しますが、2つのアナログ製剤を組み合わせることにより、グルカゴンの血糖上昇作用をGLP-1が抑え込みつつ、グルカゴンによる脂肪分解作用や体重減少作用を得ることができます。
※いくつかのGLP-1/グルカゴン共受容体作動薬は現在フェーズ1、フェーズ2の診療試験が行われています(cotadutide, SAR425899,pegamodutide (OPK88003), efinopegdutideなど)
GLP-1とGIPの組み合わせについても、GLP-1作用により血糖値が低下することで「GIP抵抗性」が解除され、GIP作用をさらに活かすことが期待できます。
さて、本題である、GLP-1受容体作動薬、GLP-1/GIP共体作動薬、GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬の血糖改善効果と減量効果を比較したシステマティックレビューについてご紹介したいのですが、意外と記事が長くなってしまったので…
帰って寝ます。