膵部分切除(PD、DP)後の糖尿病発症リスク

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
Mossan、インスリンを分泌している臓器はどこか知っていますか?
もちろん知ってますよ。すい臓ですよね。
Mossan
Mossan

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
そうですね。すい臓にはインスリンを分泌するβ細胞がありますね。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
では、手術ですい臓の一部が切除された患者さんでは、血糖はどうなるのでしょうか?
えっ?!
血糖は…上がっちゃうのかな…?
Mossan
Mossan

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
今日は、すい臓を一部切除したあとの糖尿病(膵切除後糖尿病)についての論文をご紹介します。

膵頭十二指腸切除(PD)後と、膵体尾部切除(DP)後の糖尿病発症率には差がある

膵腫瘍などに対して行われる膵部分切除術には、膵頭十二指腸切除(PD)と、膵体尾部切除(DP)があります。

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
PDは、すい臓の頭の部分(膵頭部)と、そこにつながっている十二指腸、胆管などを切除する手術、
DPは、膵体部から尾部にかけて切除する手術です。

切除部分が異なるPDとDPによる糖尿病発症リスクの違いと、その要因を調べた研究をご紹介します。

膵部分切除が行われる患者さん48名を対象とした研究です。(PD:20名、DP:28名全員、手術前に糖尿病はありませんでした。また、慢性膵炎や膵がんは、病気そのものが血糖値に影響を与えてしまうため、研究対象から除外されました。

 

下図が術式による糖尿病発症率をみたグラフです。

 

Mossan
Mossan
膵体尾部切除術(DP)を受けた患者さんでは、3年経ったら半分以上の人で糖尿病になってる?

患者さんの病気の状態により異なりますが、一般的には、PDとDPで切除するすい臓の体積には、大きな違いはありません。

しかし、術式により、術後の糖尿病発症リスクに大きな差が認められました。

 

PDでは、術後のGLP-1分泌が著明に上昇する

では、これらの患者さんの、糖負荷試験(75gOGTT)における血糖値、インスリン、GLP-1(インスリンの分泌を促して血糖値を下げるホルモン)の変化を見てみましょう。

糖負荷試験(75gOGTT)

上図は、糖負荷試験(75gOGTT)のデータです。上段がPD,下段がDPの患者さんであり、◯が術前、●が術後6ヶ月のデータです。

グラフが多い…(頭クラクラ)
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
そんなこと言っていたら、立派な糖尿病専門犬になれませんよ(スパルタ)
PDと、DPって、略語がわかりにくいわ!
Mossan
Mossan
まる
まる
Mossan、つべこべうるさい。

PDの患者さんでは、すい臓を一部切除しているにもかかわらず、糖負荷試験における血糖値(上段右)は術前と比べて全く悪化していません

さらに、PDの患者さんにおけるインスリンとGLP-1(上段真ん中と左)を見ると、驚くベきことに(!)、手術後のほうがGLP-1とインスリン分泌が増加しています。

手術により、食べ物がより早く腸管に到達するようになり、GLP-1分泌が上がって、インスリン分泌も増えるのですね。これが、血糖が悪くならない要因の一つなのでしょう。

これに伴い、PDを受けた患者さんでは、術後の腸内細菌叢が変化し、短鎖脂肪酸が増加したと報告されていました。

DPの人たちは?
Mossan
Mossan

一方、DPを受けた患者さんは、術後のインスリン分泌は低下し、血糖も上昇傾向です。PDの患者さんとは全く違う結果でした。

 

(おそらくインスリン抵抗性により)膵β細胞が肥大化している患者では、DP後の糖尿病発症リスクが高かった

じゃあ、DPの患者さんで、糖尿病になってしまったのはどんな人?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
下図をみてください。

上図は、切除した膵組織のインスリン、グルカゴン分泌細胞を免疫染色により同定して、各分泌細胞の面積と、術後の糖尿病発症との関係を調べたグラフです。(分泌細胞の面積により2群に分けて比較しています)

Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
DPでは、膵臓に占めるβ細胞やα細胞の面積が大きい患者さんで、術後の糖尿病発症リスクが高かったのです。
おかしくない?インスリンを分泌するβ細胞が大きければ、糖尿病になりにくいんじゃないの?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
さらに、難しいことをお話しすると、β細胞やα細胞の面積比が高いほど、膵β細胞の脱分化関連マーカーである ALDH1a3の発現も上がっていたのです
※☆△〇×… 全くわかりません。今日はもう帰ってもいいですか?
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
私にもよくわかりませんが…
インスリン抵抗性が上がり膵β細胞に負担がかかると、β細胞が肥大化したり、 ALDH1a3の発現が増えることが知られているので、
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
もともと膵β細胞に負担がかかっていた患者さん(≒インスリン抵抗性が高い患者さん)では、手術後に糖尿病を発症しやすくなるのではないかと思います。多分…
なるほど。
Mossan
Mossan
Gajigaji Dr.
Gajigaji Dr.
(…ほんとにわかってる?)

膵部分切除後に糖尿病を発症するかどうかは、単にすい臓の切除部位(体尾部にはβ細胞が多いと言われています)や切除サイズのみならず、術式による腸内細菌や消化管ホルモンの変化や、患者さんの状態(インスリン抵抗性など)などの複合的な要因により決まってくるのですね。

Importance of Intestinal Environment and Cellular Plasticity of Islets in the Development of Postpancreatectomy Diabetes. Fukuda T, et al. Diabetes Care 44:1002–1011, 2021

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