糖尿病の寛解により膵臓のサイズや形状が回復する

ガジガジDr.
ガジガジDr.
今日は驚くべきデータをご紹介します!!

先生、今日も熱いね~♪ どんなやつ?
モッさん
モッさん
なに言ってんのよ。毎日めちゃくちゃ寒いやんか。
まる
まる
ガジガジDr.
ガジガジDr.
大きくなるのです!膵臓が!!すごくないですか?!

まるさんは2型糖尿病と膵形態・サイズとの関連についてあまりご存じないと思いますのでこれからわかりやすく解説しますがまず2型糖尿病患者における膵全体(Acinar cell、islet cell、ductal cellを含む)やβ細胞、α細胞の容積やmorphologyの変化、インスリン分泌能について現在まで行われてきた研究を振り返ると…

この犬暑苦しいわ。
まる
まる

糖尿病患者さんでは、膵臓が小さくなり、形状も悪くなることが報告されている。

前回の記事でDiRECT studyを紹介しましたね。

今回は、そのpost-hoc解析(事後解析)をご紹介したいと思います。

前回は「減量すれば、糖尿病が治る(寛解する)か?」について調べられた研究でした。

今回はなんと「糖尿病が寛解すると膵臓の大きさや形態が回復するのか?」という問いに答えるべく行われた試験です。

糖尿病の人は、膵臓が小さいの?
モッさん
モッさん

ガジガジDr.
ガジガジDr.
いい質問しましたね!さすが教え子ですね。


膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞は、糖尿病予備軍(耐糖能障害)の頃からすでに減少しはじめ、糖尿病を発症する頃には、なんと50%以下まで減少していることが知られています。

 

一方、糖尿病患者さんの膵臓そのもののサイズについては、まだ多くのデータはありませんが、非糖尿病者と比べて30%程度小さいことが報告されています。

 

さらに、サイズだけでなく、膵臓の形態も異常をきたし、MRI検査では辺縁の不整がみられることが報告されています。

 

しかし、糖尿病が寛解することにより、一旦進んでしまった膵臓の変化を巻き戻せるか、ということについてはわかっていませんでした。

 

そもそも、膵臓の形態学的変化が起こって糖尿病になるのか、はたまたその逆なのか、膵臓の機能低下と形態変化の因果関係についても明らかになってはいないのですが…

 

はあ、奥深いですね。

話、長いね…。

年末は僕も忙しいし、もうちょっと簡潔に説明してほしいな。

モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
(フンッ)

 

糖尿病が寛解した人では、低下していた膵容積の回復、膵形状の改善を認めた。


Gajigaji Dr.の言うとおり、糖尿病患者さんでは膵臓サイズの縮小や形状の崩れ(膵辺縁の不整など)を認めたといういくつかの報告がありますが、糖尿病が寛解することにより、これらの膵臓の変化が回復するのか?ということについてはわかっていません。

 

では、論文のデータを見ていきましょう!

事後解析ですので、前回ご紹介した研究と同じ対象者が解析されています。

すなわち、 ①20~65歳 ➁BMI 27~45  ➁2型糖尿病を発症後6年以内 ③HbA1c12%未満、インスリン治療中ではない。

を満たした人でしたね。

 

対象者のうち介入群に割り付けられた人のうち、減量により2型糖尿病が寛解した人はResponder、寛解しなかった人はnon-responderと定義されました。

 

Responder、non-responder、糖尿病患者(非介入群)、非糖尿病者(非介入群)のあいだで、2年間にわたり膵容積と膵形態が比較されました。

※寛解は、糖尿病薬を使用せずHbA1c6.5%未満、空腹時血糖126mg/dL未満まで低下した場合と定義されました。

 

 

まず、MRI(Dixon法)で計測した膵容積の推移です(下図)。

 

 

寛解群では、2年間で膵容積が増えているのがわかりますね!(赤矢印)

2年後には、非介入の糖尿病患者、non-responder群と比較して有意に膵容積が増加していました。

 

 

さらに、Responder群における、膵容積や形状の変化を、非糖尿病者と比較したのが下の図です。

 

左から1~4番目のバーは、寛解した人(Responders)の、膵容積、Fractal dimension、最大インスリン分泌能の推移(0~24ヶ月)です。

 

一番右のバー(青)が非糖尿病者です。

(ちなみにFractal dimensionは、MRI検査における膵辺縁の不整の強さをあらわす指標のようです)

 

非糖尿病者と比較して、Respondersの介入前(ベースライン)の膵容積は有意に小さく、形も悪く、インスリン分泌能も低いことがわかります。

 

しかし、介入開始後は、徐々に容積が増大し、形状も良くなっていくのがわかります。

2年たつと、糖尿病ではない人と同じくらいまで回復してる?
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
そうなんですよ!
膵臓の大きさも、形も、インスリン分泌能も回復しているのです!!

 

 

実際の膵形態の画像が下図です(MRI画像)。

 

 

たしかに、きれいな形に戻っていってる感じがする。
すごいね…
モッさん
モッさん
ガジガジDr.
ガジガジDr.
すごいですよね!

 

但し、減量介入により、このような膵臓の回復が期待できる2型糖尿病患者さんはどのような人たちか、この効果がいつまで持続するのかなど、まだわかっていないことが非常に多いです。

このデータの意義を正しく評価するためには、さらなる研究の結果が待たれるところですね。

2-year remission of type 2 diabetes and pancreas morphology: a post-hoc analysis of the DiRECT open-label, cluster-randomised trial. Al-Mrabeh A, Hollingsworth KG, Shaw JAM, McConnachie A, Sattar N, Lean MEJ, Taylor R. Lancet Diabetes Endocrinol. 8:939-948,2020

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