クローズドループシステムとは、患者さんが装着しているCGMセンサーの血糖情報に応じて、インスリンポンプの注入速度を自動的に増減するシステムですね。
「人工すい臓」とも言われています。
従来のCSIIやSAP療法に比べて、クローズドループシステムを用いたポンプのほうが、よりよい血糖コントロールを達成できるという報告が増えています。
クローズドループシステムであれば、血糖値は完璧にコントロールできそうですが、急激な血糖変化への対応は難しく、そのアルゴリズムにはまだ課題があるようです。
さて、尿糖を排泄することにより血糖値を下げる働きを持つSGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者さんだけでなく、1型糖尿病患者さんの血糖コントロールも改善させることが分かってきています。
フルクローズドループシステムのポンプ使用中の1型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した研究。
30人の1型糖尿病患者さん(平均BMI:23)を対象として行われたクロスオーバー研究です。
参加者は、一般に使用されているメドトロニック社のインスリンポンプ(paradigm Veo)とCGMセンサ(Enlite IIセンサ)、コントアネクスト(無線通信機)を組み合わせたクローズドシステムのインスリンポンプを用いた治療を行っています。
これらの機器をつなぐシステムとして、DreaMed Glucositterが使用されています。
参加者は、夜の19時と翌朝7時にダパグリフロジン(またはプラセボ)10㎎を内服しました。
さらに、副次評価項目として、平均血糖やSD、TAR(%)、TBR(%)、ケトン体(ベータヒドロキシ酪酸)などが比較されました。
ダパグリフロジン投与により、食後血糖が速やかに低下し、夜間の血糖値が安定。
下の図が、CGMセンサによるグルコース値のプロファイルです。
ダパグリフロジン投与により、低血糖時間を増加させずにTIRが増加した。
下図が、各パラメータの比較です。
ダパグリフロジン内服群では、日中のTIRが大幅に増えて、TAR(グルコース値180mg/dLを超えた時間)がかなり減っています!
それにもかかわらず、TBRは変わりません。
ダパグリフロジン内服群でやはりケトン体は少し上昇しましたが、問題となるレベルまでは上昇しなかったようです。
インスリン注入が自動的に調整されるクローズドループシステムのポンプユーザーにおいても、SGLT2阻害薬により、さらに血糖が安定化したのは驚くべきことですね。
※ただし、1型糖尿病患者さんにSGLT2阻害薬を使用する際には、発症すれば致命的となる正常血糖ケトアシドーシスには十分に留意が必要です。
Add-on therapy with dapagliflozin under full closed loop control improves time in range in adolescents and young adults with type 1 diabetes: The DAPADream study. Diabetes Obes Metab. 23:599-608, 2021
※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載はご遠慮ください.