クローズドループシステム(人工膵臓)とは、血糖データからインスリン注入量を決定して血糖値を制御する完全に自動化されたシステム
現在、日本で使用できるインスリンポンプの一部の機種(メドトロニック社MiniMed 640G) では、低血糖時にインスリン注入を中断する機能はありますが、高血糖時にインスリン注入を増量するなどの機能は備わっていません。
クローズドループシステム(人工すい臓)とは、グルコース値を定期的に計測して、そのデータをもとにインスリン注入の調整を行ってくれる完全に自動化されたシステムのことです。
このクローズドループシステムとして、現時点で最もよく知られているのは、メドトロニック社のMiniMed 670G systemでしょうか。(日本ではまだ使用できません)
完全に自動化されるまでには至っていないため、hybrid closed systemともいわれています。
DIYクローズドループシステム(DIYAPS)は、一般に使用されているインスリンポンプ、グルコースモニター、スマートフォンを自作で連動させて人工すい臓を作るという方法。
一方、海外では、DIY closed-loop systems(別名DIYAPS:do it yourself artificial pancreas systems) のユーザーもじわじわと増加しつつあるようです。
これは、まさに文字どおり、DIYの人工すい臓です。
一般に使用されているインスリンポンプ、グルコースモニター、スマートフォンを自作で(DIY!)連動させて人工すい臓を作るという方法です。
グルコースモニターの情報を読み出して、小さなコンピュータを介してスマートフォンやスマートウォッチにデータを送り、オープンソースのアルゴリズムによりインスリン投与量の決定を行い、ポンプより注入されるシステムを作ってしまおうということですね!
DIYAPSを使用してハーフマラソンを走った女性ランナーでは、血糖は良好に制御された。
16年の罹病期間がある43歳の1型糖尿病の女性ランナーです。もともと週40km程度のトレーニングを行っているそうですが、レース中の低血糖やその後の高血糖が怖く、レースには参加したことがなかったそうです。
この女性ランナーが今回はじめて、DIYAPSを装着してハーフマラソンに参加しました。レース前後およびレース中の、血糖値(センサグルコース値)のデータとインスリン投与量が示されています。
彼女が行ったこととしては、レース1時間前に目標血糖を150mg/dLに上げておき、レース開始直後に、3gの炭水化物摂取と0.4単位のボーラスインスリン、1時間後に4gの炭水化物摂取と0.5単位のボーラスインスリンを投与しています。(レース中のエネルギー補給として)
そして、21kmを2時間17分で低血糖や著明な高血糖なく完走されました。平均脈拍数は156bpmでした。
それでは、レース前後、レース中の血糖推移とインスリン投与量を見てみましょう(下図)。
黄色の枠がレース中のデータです。レース前半は、ストレスで血糖が上がり、基礎インスリンの投与量が増えていますね。後半はだんだんと血糖が下がり、投与されるインスリンもかなり減っています。
レース中の平均血糖は184mg/dl (118-247 mg/dL)で、低血糖や著明な高血糖なく良好にコントロールされました。
最後に、レース前後のインスリン投与量を見てみましょう(下図)。
レース日は、やはり摂取量に比して追加インスリンが少なめですが、案外入っているな、という印象もあります。
レース前後の運動量がわからないので何とも言えないですが、レース2日前と翌日、翌々日は(炭水化物摂取量に応じた)インスリン量はほぼ同程度でしょうか。
DIYAPS、日本でも使用されている方は少数いらっしゃるようですが、我が国で一般に知られているシステムではありません。
もちろんシステムの不具合があれば、即座に命に関わりますので、その安全性については、広く使用される前に十分検証される必要があると思います。
近い将来、1型糖尿病患者さんの治療の選択肢の一つになるとよいと思います。
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