「呼吸器疾患や糖尿病などをはじめとする慢性疾患をお持ちの方は、感染には特に注意しましょう」と一般に言われているものの、本当に感染のリスクが上がるのか?どの程度上がるのか?などについては、まだほとんどわかっていません。
情報がないから、余計に恐ろしくなりますよね…
糖尿病患者さんと新型コロナウィルス感染症に関する我が国のデータは、現時点では存在しませんが、海外のデータは、ごく最近少しずつ報告されています。
糖尿病患者ではコロナウィルス罹患率が上昇する。(米国データ)
下図は、米国疾病予防管理センターにより収集されたデータを基にして行われた研究です。
糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心血管疾患について、
新型コロナウィルス(COVID-19)感染者と、一般人口(NHANESデータベースより)における有病率を、年齢別に比較したグラフです。
赤のバーが、新型コロナウィルス感染者における各疾患(糖尿病、COPD、心血管疾患)の有病率、青のバーが、一般人口における各疾患の有病率です。
少なくともこのデータからは、糖尿病の患者さんはCOVID-19に感染しやすい可能性が考えられますね。年齢別に見ても、60歳台くらいまではその傾向がありそうです。
また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんでは、糖尿病よりもさらに感染のリスクが高くなることが予想されますね。
糖尿病患者が新型コロナウィルスに感染した場合、非糖尿病者と比較して死亡率が高くなる。但し、血糖コントロールが良好な場合は、そのリスクは上がらない。(中国データ)
COVID-19感染による2型糖尿病患者の死亡率を調べた研究はいくつかありますが、
今回は、2型糖尿病患者の血糖コントロール状況とCOVID-19による死亡率との関係を調べた研究をご紹介します。
2019年12月~2020年5月のあいだにCOVID-19感染で入院した患者7337人を対象とした、中国の多施設共同研究(19施設)です。
このうち952人が2型糖尿病患者さんでした。
下の図が入院後28日間の生存率のグラフです。
しかし、
観察期間中の血糖値が70mg/dL~180mg/dLのあいだで推移した人を「血糖良好群」、最も低い時の空腹時血糖値が70mg/dL以上、もしくは食後の血糖値が180mg/dL以上であった人を「血糖不良群」と定義して、両群間での死亡率を比較すると…
「血糖良好群」では、人工呼吸器使用や、ARDS、腎障害、敗血症性ショック、急性心不全などの発症率が低くなっており、死亡率が低下したと考えられます。
単純に比較することはできませんが、上図2つの「生存率」を見ると、「血糖良好群」は、「非糖尿病者」の生存率と同程度でしょうか?
血糖コントロール状況が、重症化するか否かを決めている可能性がありますね!
(※但し、これは「入院中」の血糖値ですので、血糖が良好であったから生存率が上がったのか、軽症だったから血糖も良好に推移したのかはわかりません)
ちなみに「血糖良好群」の平均HbA1cは7.3%、「血糖不良群」のHbA1cは8.1%でした。
また、糖尿病合併症が進行している患者さんでは、重症化のリスクが高くなるのではないかと考えられていますので、特に注意が必要です。
Fang M, et al. Prevalence of Chronic Disease in Laboratory-Confirmed COVID-19 Cases and U.S. Adults (2017–2018) Diabetes Care. 2020 Aug 12;dc201640. doi: 10.2337/dc20-1640. Online ahead of print.
Zhu L, et al. Association of Blood Glucose Control and Outcomes in Patients with COVID-19 and Pre-existing Type 2 Diabetes. Cell Metab. 31:1068-1077, 2020
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