糖尿病
Diabetes
糖尿病
Diabetes
1型糖尿病(および膵性糖尿病をはじめとするその他の糖尿病)のアプローチについては
専門家でないとわからない部分が多く特に専門的な治療が必要なタイプの糖尿病です
1型糖尿病の専門診療、およびその他の特殊な糖尿病の専門治療については、ぜひお任せください。
これらのタイプについては豊富な診療経験があります。
1型糖尿病の患者さんにおいては、ペン型インスリンによる治療、インスリンポンプによる治療、ペン型インスリン(もしくはインスリンポンプ)と持続グルコース測定器を組み合わせた治療などの、幅広い選択肢から、その患者さんの病態や生活、嗜好に最も合った治療法を、患者さんと一緒に選んでいきます。
当院では、インスリンポンプ療法を積極的に勧めており、通院中の1型糖尿病患者さんの半数以上がインスリンポンプ療法の患者さんですが、ペン型インスリン治療についても非常に多くの診療実績がありますので、安心して診療を受けていただけます。
どのような最新のデバイスを用いたとしても、うまくそれを活用できなければ血糖値はよくなりません。
つまり、どの治療法においても、皆さんが使用しているインスリンや最新のデバイスを、いかにうまく生活に合わせて使うことができるかがポイントになります。
1型糖尿病患者さんにおいて、「生活にインスリンを合わせる」ということは、言うのは簡単ですが、なかなか容易にできることではありません。
インスリンをいかに上手く使うかが
低血糖を増やさず血糖コントロールを改善させるカギ
どのような食事をとる時に、どれくらい活動(運動)した時に、どのような月経周期の時に、どのように追加インスリンの単位を決めるのか、どのように基礎インスリンの量を決めるのか、具体的にお話しすることができます。
インスリンポンプ療法の方(もしくはポンプ導入を考えている方)に関しても、追加インスリンの注入方法、留意点、基礎インスリン変更の目安などについて、具体的にお話しすることができます。
1型糖尿病の患者さんであれば、日々実感されていると思いますが、1型糖尿病の治療は、ただインスリンを頻回に打っていれば良くなるというものではありません。
HbA1cが高いからといって、安易にインスリンを増量すれば、低血糖が増えて患者さんを苦しめることになりますし、1型糖尿病だから仕方がないと血糖が高めであるのをあきらめてしまったら、合併症から自身の体を守ることができません。
ペン型インスリン治療であっても、インスリンポンプ療法であっても、インスリンをいかにうまく使うかが、低血糖を増やさず、血糖コントロールを改善させる鍵となります。
患者さんの、「糖尿病のコントロールを良くしたい!」「生活で困っている点を良くしたい!」の思いさえあれば、私達専門チームは、あらゆる治療法を、療養のコツを伝授して、患者さんの糖尿病を少しずつでも、必ず良くすることができます。
インスリン治療のなかには、ペン型インスリンによる皮下注射(一般的に知られている方法)のほかに、携帯型のインスリンが入ったポンプを用いて持続的にインスリンを注入するインスリンポンプ療法(CSII: continuous subcutaneous insulin infusion)があります。
さらに、パーソナルCGM機能(リアルタイムに血糖値を見ることができる持続血糖モニター)と連動したインスリンポンプ(SAP:Sensor Augmented Pump)療法もあります。
当院では、インスリンポンプ療法を積極的に勧めており、当院通院中の1型糖尿病患者さんの約3割がインスリンポンプ療法の患者さんです。
CSII
持続皮下インスリン注入療法
Continuous
Subcutaneous
Insulin
Infusion
SAP療法
Sensor
Augmented
Pump
インスリンポンプは、「皮下に、持続的に、インスリンを注入することができる機械」のことです
一方、インスリン注射も、皮下にインスリンを注入することで血糖をコントロールします。
インスリンポンプとインスリン注射の違いはどこにあるのでしょうか?
インスリン注射で使用するインスリン製剤
インスリン注射で使用するインスリン製剤は、(1)と(2)の2種類を使用します。
この2つを組み合わせて、ヒトの生理的なインスリン分泌に近い形でインスリンを補います。
(1)作用時間の短いインスリン(超速効型、速効型インスリン)
→食事やおやつのたびに注射します。追加分泌を補うインスリンです。
(2)作用時間の長いインスリン(持続型インスリン)
→1日1回注射します。基礎分泌を補うインスリンです。
インスリンポンプで使用するインスリン製剤
インスリンポンプで使用するインスリン製剤は、1種類のみです。
機器には、数日分のインスリンを入れておく小さなタンク(リザーバー)がありますが、そこに入れることができるインスリンは1種類のみです。
一般には、インスリンポンプでは、超速効型インスリンを使用します
これはインスリン注射で使用する超速効型と全く同じものです(数時間で切れてしまう方のインスリンです)。
インスリンポンプでは、この1種類のインスリンで、追加分泌も、基礎分泌も補うのです。
【基礎分泌の補い方】
追加インスリンは、基本的にはインスリン注射と一緒です。食べる前に注入ボタンを押してインスリンを投与します。
では、持続的に分泌されている「基礎分泌」を、短い作用時間のインスリンを使って、どのようにして補うのでしょうか?
超速効型インスリンが入る速度を時間ごとに変えながら絶え間なく注入して、その人に最も合った基礎インスリン分泌のパターンを作るのです。
インスリン注射にはない、インスリンポンプの強み8つ
患者さんに合った基礎インスリンパターンにすることができる。
右の図は、日本人における時間ごとの基礎インスリン必要量を調べたデータです。このように、基礎インスリン必要量は、多くの患者さんで明け方~午前中に多く、真夜中は少なめになる傾向があります。特に小児や思春期の患者さんでは、この傾向が顕著になります。
これが、一つ目のポイントになります。
インスリン注射では、1日に1回注射する持続型インスリンは、ほぼ平坦なパターンで効くので、それぞれの患者さんに合った基礎インスリンパターンを再現することは難しいのです。
特に明け方に基礎インスリンの必要量がぐっと多くなる暁現象と呼ばれる血糖パターンを持つ患者さんでは、持続型インスリン注射では、明け方の血糖上昇が抑えられないことが多いです。
一方、インスリンポンプでは、短い作用時間のインスリンを使用するので、時間毎にインスリン注入量を変えることで、その人に合ったパターンに限りなく近づけることができます。
ミニメド770Gでは、この基礎インスリンパターンと注入量はそれぞれの方に合わせて自動調整されます。
血糖コントロールが良い人に共通していることのひとつは、インスリンをこまめに打っていることです。
カーボカウントを行って正しく炭水化物の見積もりを行い、活動量、月経周期、体調などを考慮して、細かくインスリンを調整しても、予想外に血糖が上がってしまうことや下がってしまうことは、誰にでも、比較的頻繁に起こることです。 そして、上がってしまった血糖に対しては補正インスリンを投与しないと下がりません。
この時に補正する(インスリンを投与する)ことは、血糖を良好に保つうえで非常に重要なことです。
この点では、ポンプは有利です。
いちいち肌を出して、注射と針を用意して打たなければならないペン型インスリンと違い、ポンプはボタンを押すだけで注入できます。外出先や人前でもインスリンが投与しやすいですね。
SAP療法の場合は、低血糖や高血糖時、急激に血糖が変化しているときに教えてくれる。
ポンプに連動する持続血糖モニターを装着すれば、血糖のベクトルや血糖変化の速さなどから「もうすぐ低血糖になりそう!」とポンプが判断した時に、インスリン注入が自動的に中断される機能が使用できます(図の赤線の部分)。
また、高血糖時や、血糖が急激に上がった時にも知らせてくれるので、早めの対処が可能です。
食事の時にボーラスインスリンを打ったけど、血糖が思ったより上がってしまって、補正インスリンを打ちたい!
でも、前に打ったインスリンの作用と重なって、補正インスリンを打ったら下がりすぎてしまうかも、、と心配になることはありませんか?
こんな時にも、まだ作用せず体内に残っているインスリンの単位(残存インスリン)を機械が予測して、その分を差し引いて補正インスリンを注入することができます。
このため、インスリンの入りすぎを気にすることなく、こまめにボーラスできるという利点があります。
ポンプでは0.025単位刻みで調整が可能です。
インスリン注射は最少0.5単位刻みでしか調整できません。 細かく調整できることは、よりよい血糖コントロールにつながります。
ポンプにしかない便利な機能が使用できる
(770GではオートモードOFFの場合のみ)
一時基礎レート機能
脂質の多い食事摂取時
肉類や、脂質の多い食事(揚げ物、炒め物など)を摂取した時は、食後何時間も血糖が下がらないということを経験されると思います。
夕食であれば、朝まで高い血糖が続くということもあるでしょう。
タンパク質は6時間程度、油脂はなんと10時間以上血糖を上げ続けるからです。
超速効型インスリンは、血糖値に最も影響する炭水化物摂取による血糖上昇のタイミングに合わせて効果を発揮しますので、油脂やタンパク質による長時間の血糖上昇に対しては、別の対策が必要になります
ペン型インスリンであれば、3~4時間毎に補正インスリンを打つ、比較的長時間作用する中間型インスリンを併用するなどの手があります。
ポンプの場合は、一定時間、一定量のインスリンを余分に入れることができます。
「今晩は焼き肉を食べたから、今から8時間、いつもは0.4単位/時間のところ、0.8単位/時間のインスリンを入れる」
などの設定が可能です。
運動時
ウォーキングやジョギング、筋トレ、テニスなど、どんな運動でも、運動中とその後しばらくは血糖が下がりやすい状態になります。
例えば午前中に登山をすると、夜まで血糖が低めの状態が続くこともあると思います。 このような時には、一定時間、持続的に入っているインスリンを減らしておくことができます。
「ジムで3時間運動するから、今から5時間、いつもは0.4単位/時間のところ、0.3単位/時間にインスリンを減らす」
などの設定が可能です。
ボーラス注入パターンの変更
飲み会やコース料理など、時間をかけて食事する時や、脂質が多い食事の時には、一時基礎レートだけでなく、このようなボーラス注入パターンも使用することができます。その他、ノーマルボーラスだと食後すぐに血糖が下がってしまう患者さんでは、スクエアやデュアルボーラスに変えるとうまくいくことがあります。
ノーマルポーラス
指定したインスリン量を直ちに注入できる
スクエアウェーブポーラス
指定したインスリン量を指定した時間をかけてゆっくり注入できる
デュアルウェーブポーラス
指定したインスリン量をノーマルポーラスとスクエアポーラスを組み合わせて注入できる
妊娠中は、経過に伴いインスリン必要量が急激に変化します。 また、胎児の正常な発育のために、通常よりも厳格な血糖管理が求められます。
糖尿病合併妊婦さんでは1日6回程度の分割食が必要になりますので、最低でも1日6回、補正インスリンも合わせると10回以上のインスリン注射が必要になることが多いです。
このような状況では、インスリンポンプによる血糖管理が望ましい場合が多いです。もちろん、妊娠中もインスリン頻回注射で良好に血糖管理される患者さんも、多くいらっしゃいますので、「妊娠中は必ずポンプ療法!」ということはありません。ただし、一度はポンプ療法について考えておくべきだと思います。
2種類のインスリンポンプのうち、自分に合ったものを選択できる。
現在、わが国ではメドトロニック社のミニメド770Gとテルモ社のパッチ式インスリンポンプが使用できますので、ご自身に合ったポンプを選択できるようになっています。
インスリンポンプ
ミニメド770Gシステム :メドトロニック社
新しいバージョンのインスリンポンプが2022年1月より日本でも使用できるようになりました。
このポンプは、CGM(持続血糖測定器)と組み合わせて使用(SAP療法)することにより、Hybrid Closed loop systemと呼ばれる、グルコース値に応じて基礎インスリン注入を自動的に調整するシステムが搭載され、人工すい臓にかなり近づいたインスリンポンプが使用できるようになりました。
グルコース値の推移をいつでも確認することができ、低血糖時にはインスリン注入を中断する機能だけでなく、Auto modeにセットすると、高血糖時にベーサルインスリンを増量する機能が使用できます。
なお、前モデルの640Gと異なり、スマートフォン(対応機種のみ)でグルコース値を確認することができます。
パッチ式インスリンポンプよりも、より細かい設定が可能です。
パッチ式インスリンポンプ
MEDISAFE WITH :テルモ社
チューブフリーなので、チューブが引っかかることもなく、装着中のストレスが少ないポンプです。
770Gに比べて操作方法がシンプルでわかりやすいです。
CGM(持続血糖測定器)とは連動しません。
大きなデメリットは一つだけです
インスリン治療にかかる1ヶ月あたりの医療費の自己負担額について、大まかな目安をまとめています。
(初再診料や、検査料、院外薬局で支払う薬剤費は含まれていません)
ペン型インスリン | インスリンポンプ | ポンプ+リブレ | SAP (CGM2個以下) |
SAP (CGM4個以下) |
SAP (CGM5個) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
在宅自己注射指導管理料 | 7,500円 | 12,300円 | 12,300円 | 12,300円 | 12,300円 | 12,300円 |
血糖測定加算 120回 | 14,900円 | 14,900円 | 14,900円 | 14,900円 | 14,900円 | 14,900円 |
間欠注入シリンジポンプ加算 | - | 25,000円 | 25,000円 | - | - | - |
持続血糖測定器加算 | - | - | - | 32,300円 | 32,300円 | 32,300円 |
CGMセンサー | - | - | - | 13,200円 | 26,400円 | 33,000円 |
合計 | 22,400円 | 52,200円 | 52,200円 | 72,700円 | 85,900円 | 92,500円 |
3割負担の場合 | 6,720円 | 15,660円 | 15,660円 | 21,810円 | 25,770円 | 27,750円 |
上の表では、インスリン注射から、インスリンポンプに変更することにより、3割負担の方では9,000円程度高くなっています。
但し、注射針や使用するインスリン容器の違いにより、インスリンポンプ療法の場合は薬局で支払う額が1,500~2,500円程度(3割負担)安くなることが多いので、実際には7,000円程度の差になることが多いです。
(あくまで概算であり、インスリン製剤の種類、使用量や治療内容により異なります!)
CGMも使用すると、さらに10,000円程度の医療費がかかることになります。
※20歳未満の患者さんでは、小児慢性特定疾病の医療費助成制度が適用されます。
インスリン刺入部(カニューレ部位)の固定シール、CGMの固定シールのかぶれ
皮膚が弱い、デリケートな方では、このかぶれ(接触性皮膚炎)に悩まされることがあります。製造メーカーもシールの改良に力を注いでいますが、現時点では治療に伴うデメリットの一つです。
但し、皮膚トラブルを回避、軽減するための色々な方法がありますので、皮膚トラブルのためにポンプ療法を中止せざるを得ない方は非常に少ないです。
これはデメリットではなく、ポンプを使用する上で最も重要な注意点になります。
ポンプ閉塞(チューブが詰まった)時には、インスリン注入がストップするので、気づかない、または放っておくと糖尿病ケトアシドーシス発症のリスクが極めて高くなります。
但し、ポンプ閉塞の予防や、閉塞時の対応について、患者さんが詳しく説明を受けており、さらにトレーニングができていれば、大事に至ることは決してありません。
当院では、多くの実績から、インスリンポンプを安全に導入し、確実な血糖コントロールの改善につなげることができます。
インスリンポンプには非常に便利な機能が備わっていますし、使い慣れるとともに、より良好な血糖コントロールを達成できることが多いです。
しかし、1型糖尿病の治療方法として、「インスリンポンプ療法が注射療法よりも絶対によい!」 というわけではありません。
我々糖尿病チームは、患者さんの糖尿病の状態や生活スタイル、そしてなにより患者さんの「こうしたい」という気持ちを重視して、患者さんに合った治療法を探していきたいと考えています。
リアルタイムContinuous Glucose Monitoring(CGM)
リアルタイムContinuous Glucose Monitoring(CGM)
ガーディアン
(メドトロニック社)
Dexcom G6(テルモ社)
リアルタイムに血糖を知ることができるだけでなく、低血糖や高血糖時のアラート機能により、危険を知らせてくれる機器です。
ガーディアンやDexcomG6では、血糖値をお持ちのスマートフォン(対応機種のみ)で確認することができます。さらに、低血糖の予測機能を搭載しているため、低血糖になってしまう前に知らせてくれます。
なお、DexcomG6は指先血糖測定による較正の必要がありません。連続10日間使用できます。
検査目的であればすべての糖尿病の方に、継続使用の場合は1型糖尿病(もしくはインスリン分泌が枯渇した糖尿病)の方に保険診療でご使用いただけます。
なお、フリースタイルリブレも保険診療でご使用いただけます。
※フリースタイルリブレは、小さなセンサーを上腕に装着し、測定器もしくはスマートフォン(NFC搭載機種)をかざすだけで自分の血糖をリアルタイムに知ることができる機器です。
〒650-0001
神戸市中央区加納町1-3-2 コトノハコ神戸1F
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